Streptococcus intermediusはStreptococcus anginosus groupに属し、脳膿瘍を形成し分離頻度の高い菌種として知られる。小児脳膿瘍からS. intermedius TYG1620株を分離し、全ゲノム解析の結果、Lanthionine型抗菌ペプチドの生合成遺伝子群の保有を明らかにした。膿瘍を形成する際には口腔常在フローラで優勢になると想定され、抗菌ペプチド(仮称インテロシン: Interocin)を産生し、常在菌よりも優勢なっていると作業仮説を立てた。 TYG1620により増殖抑制される菌種を探索するため、ヒト口腔・咽頭拭い液とTYG1620株を共培養し、メタゲノム解析による定量的な解読リード数を比較評価した。共培養で増加・不応・減少する菌種が確認され、Streptococcus parasanguinis の解読リード数が顕著に減少していたため、増殖抑制を受ける菌種候補として着目した。全ゲノム解読により、目的のS. parasanguinis 2株、S. oralis 2株、S. mitis 14株、S. salivarius 30株、Veillonella atypica 1株の分離を確認した。増殖阻害の候補菌種株をBHI寒天培地上に塗り広げ、そこにTYG1620株培養液を滴下し嫌気培養にて判定したところ、S. parasanguinisで阻止円が観察された。S. parasanguinisは歯の表面に定着し、他の細菌が付着する基礎となり、バイオフィルム形成を促進することが示唆されている。S. intermedius TYG1620株は口腔フローラの中で、重要な役割を果たす菌種を抑制することで、細菌フローラ内の生存戦略を有利にしている可能性が示唆された。
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