研究課題/領域番号 |
17K08848
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
前田 直良 北海道大学, 薬学研究院, 特任准教授 (80444800)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | レトロウイルス / JSRV / ENTV / トランスフォーメーション / 腫瘍 / タンパク質 / 構造解析 / 宿主因子 |
研究実績の概要 |
レトロウイルスjaagsiekte sheep retrovirus (JSRV)とenzootic nasal tumor virus (ENTV)の構造タンパク質エンベロープは、どちらもがん遺伝子として機能することで、JSRVエンベロープはヒツジの肺で、ENTVエンベロープはヒツジの鼻腔内で腫瘍を発症させる。JSRVとENTVのエンベロープはどちらも同じレセプターHyal-2を利用して細胞に感染するにもかかわらず、なぜヒツジで腫瘍発生部位を異にするのかが最大のなぞである。本研究では、(1)JSRV/ENTVエンベロープに相互作用し、腫瘍化・トランスフォーメーションに関与する宿主細胞内分子を同定すること、また(2)JSRV/ENTV/エンベロープのX線結晶構造解析を行うことを提案した。
どちらの実験計画においてもGSTとの融合タンパク質を調製する必要があることから、JSRVエンベロープのSUドメイン、およびTMドメインの遺伝子をクローニングし、それぞれGSTとの融合タンパク質として大腸菌BL21(DE3)にて発現させることに成功した。発現・精製したGST-エンベロープ融合タンパク質と上皮細胞溶解液を混合することにより、相互作用しうるタンパク質とエンベロープタンパク質の複合体をin vitroで形成させた後、グルタチオンビーズの添加によって複合体をpull-downした結果、SDS-PAGEにて陰性対照には見られない特異的バンドを複数見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
JSRVエンベロープのSUドメイン、およびTMドメインをそれぞれGSTとの融合タンパク質として大腸菌BL21(DE3)にて発現させることに成功した。また、JSRVエンベロープのSUドメイン、あるいはTMドメインと相互作用している宿主因子の候補を見出した。SDS-PAGEにて陰性対照には見られない特異的バンドを切り出しトリプシン消化後、MALDI-TOF 型質量分析計により解析することが可能である。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、JSRV/ENTVエンベロープタンパク質と相互作用するタンパク質の同定を試みる。
エンベロープタンパク質結晶化のスクリーニングを行い、結晶構造解析は高エネルギー加速器研究機構物質構造科学研究所放射光科学研究施設で行う。
これらの実験のために必要な試薬類の購入のための消耗品費、およびX線結晶構造解析のための旅費を必要とする。また国内学会において本研究成果を発表するために、旅費を必要とする。
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次年度使用額が生じた理由 |
MALDI-TOF 型質量分析計を用いて解析するために必要な試薬類の購入に使用する。また次年度はエンベロープタンパク質のX線結晶構造解析を高エネルギー加速器研究機構物質構造科学研究所放射光科学研究施設で行うので、この実験のために必要な試薬類の購入、および旅費に使用する。
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