フラビウイルスの感染細胞内に形成される特殊なオルガネラ:ウイルス複製オルガネラに感染特異的にリクルートされる宿主因子のスクリーニングによって同定されたVCP/p97複合体について、フラビウイルスである日本脳炎ウイルス(JEV)とデングウイルス感染系を用いてウイルス増殖における役割と機能について解析を行った。本年度は主に、複製オルガネラに集積する因子群に対して、「過剰発現がウイルス増殖を抑制する因子」のスクリーニングを行った。プロテオーム解析によって得られた複製オルガネラに集積する宿主因子のうち、101種類のcDNAを哺乳動物発現ベクターにクローニングした。これらをウイルス産生ベクターと共にHEK293T細胞に導入し、ウイルスゲノムの複製、または感染性ウイルス産生に影響を与える因子の検索を行った。ウイルス産生ベクターには、レポーター遺伝子を組み込んだレプリコンを持つ一回感染性粒子(SRIPs)産生系を用いた。101種類のうち、37種類の因子の過剰発現はゲノム複製を抑制した。また、24種類の因子の過剰発現はSRIPs産生を抑制した。これらの結果は、機能相補性を示す複数の因子がウイルス増殖において作用することを示唆している。 また、網羅的なオルガネラのプロテオミクス解析によって同定されたWedge (くさび) 型因子群がフラビウイルス複製オルガネラ形成及びウイルスの増殖に関与するか、各種因子の局在変化や、日本脳炎ウイルスやデングウイルス感染に対するWedge型因子変異体発現の影響、遺伝子破壊細胞の作成と遺伝子欠損の影響などを調べ、その分子機構を明らかにした。
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