研究課題
現在のエイズ治療の最大の目標は、エイズの原因ウイルスが潜むHIV潜伏感染細胞の感染者体内からの除去、すなわち根治である。これまでに藤田らは、HIV放出抑制活性を持つ非天然型イノシトールリン脂質L-HIPPOを創り、この化合物が細胞にHIV蛋白質を蓄積して細胞死を誘導することを見出した。この現象を“lock-in and apoptosis”法と名付けた。これを発展させれば、エイズ根治が可能となる。本研究では、この方法の改良に取り組み以下の成果を得た。(1)この現象は当初、子宮頸癌細胞株HeLa細胞で見出された。HIV潜伏感染細胞は主にT細胞であると言われるが、T細胞由来のJurkat細胞でもこの現象が見られることを示した。(2)L-HIPPO は多くの負電荷を持つため、細胞膜を透過しづらい。そこでT細胞に効率良く入るL-HIPPOの誘導体を合成することにした(この誘導体は、細胞内でL-HIPPOを発生する)。予備実験も兼ねて、L-HIPPOの部分構造であるIP6の誘導体Pro-IP6の合成を行った。Pro-IP6が細胞内でIP6を発生することや抗癌効果を持つことを証明し、論文として出版した。これらを踏まえて現在L-HIPPO誘導体の合成を行っており、最終段階で精製中である。(3)L-HIPPOの構造改変において、HIV GagのMAドメインへの結合様式が知りたい。MA蛋白質の大腸菌からの発現、精製を検討し、高濃度の蛋白質を得た。次にMAとL-HIPPO複合体のX線結晶解析を行うために結晶化を試みたが、解析可能な結晶は得られていない。一方、L-HIPPOの部分構造であるIP6とMAのX線結晶解析には成功した。MA-IP6のXFEL解析も行い、回析データのみは既に論文として出版した。今後も本研究を発展させたい。本概念は新しく、様々な抗ウイルス戦略にも応用できる。
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Bioorgamic Chemistry
巻: 92 ページ: 103240
10.1016/j.bioorg.2019.103240
http://www.pharm.kumamoto-u.ac.jp/Labs/bunsigouseiHP/research/index.html