研究課題/領域番号 |
17K08864
|
研究機関 | 和歌山県立医科大学 |
研究代表者 |
西尾 真智子 和歌山県立医科大学, 医学部, 教授 (70156040)
|
研究分担者 |
松本 祐介 和歌山県立医科大学, 医学部, 助教 (00735912)
太田 圭介 和歌山県立医科大学, 医学部, 助教 (90625071)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | ハザラウイルス / N蛋白 / クリミア・コンゴ出血熱ウイルス |
研究実績の概要 |
クリミア・コンゴ出血熱ウイルス(CCHFV)は致死性の高い人獣共通感染症の1つであり研究にはBSL4の施設が必要である。そこでヒトに病気を起こさずBSL2で扱える極めて近縁のハザラウイルス(HAZV)をCCHFVの研究を進めるためのモデルに選んだ。しかし、ほとんど論文もなくウイルスを検出するための抗体もない事から、まずはN蛋白に対するモノクローナル抗体を作製した。作成方法は大腸菌でN蛋白を発現させ、精製し、それを抗原としマウスに3回接種した。マウスの脾臓を取り出し、ミエローマ細胞と細胞融合させ、ELISAによるスクリーニングを行なった。結果、5クローンのモノクローナル抗体を得る事が出来た。この抗体を使い、細胞でのHAZV増殖、感染細胞内でのウイルス蛋白の分布等を検討した。HAZV増殖曲線より、温度によって細胞上清中でのウイルス粒子の不安定性が明らかとなった。また、アポトーシスの実験を開始し、N蛋白が細胞傷害性を抑制している事を示唆する結果を得た。 致死性を検討するためのモデルが必要であると考え、発育鶏卵を利用した病原性の検討を行なった。その結果、4日齢の発育鶏卵の黄卵嚢に接種する方法を確立した。病原性の検討にインターフェロンノックアウトマウスを使った論文の報告はあるが、格段に簡便な方法で病原性が評価できる。 ミニゲノム系の作製に関してはミニゲノムおよびN蛋白およびL蛋白を発現するヘルパープラスミドを作製した。しかし、これらのヘルパープラスミドを使用してもミニゲノムのルシフェラーゼ遺伝子は発現しなかった。CCHFVのL蛋白と同様にL遺伝子のコドンを最適化したものを人工的に合成する必要があると判断し、最適化を行なったLプラスミドを作製した。これを用いミニゲノムのルシフェラーゼ活性を検討していく予定である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画どおりN蛋白に対するモノクローナル抗体の作製に成功した。また、それらを利用し、感染細胞におけるHAZVの感染に関していくかの結果を得る事が出来た。また、病原性の検討のための動物モデルを確立する事に成功したので、ここ迄の点に関しては当初の計画以上に進んでいると言える。しかし、ミニゲノム系の作製に関しては当初作製したL蛋白発現プラスミドが巧く機能しない事が明らかになった。この点に関してはCCHFVの文献よりコドン最適化が必要である可能性があったので、最適化したものを人工的に作製する事とした。L蛋白は大きな蛋白であるため時間を要したが、機能するL蛋白発現プラスミドを作製できた。この点も考慮に入れると、全体としては、おおむね順調に進展していると言える。
|
今後の研究の推進方策 |
N蛋白に対するモノクローナル抗体を巧く作製する事が出来たので、同様の方法でL蛋白に対するモノクローナル抗体を作製する。両蛋白に対するモノクローナル抗体があれば、研究をさらに順調に遂行できると考えられる。 ミニゲノム系がほぼ出来上がったので、まず、ゲノム末端の部分にあると考えられる転写・複製に関わる機能に重量な領域等を検討する。次にN蛋白に変異を導入する事により、様々なドメインの機能を検討する。 HAZVのリバースジェネテックス系を確立し、ミニゲノムの系で明らかになった領域に変異の入ったリコンビナントウイルスを作製し、その機能をさらに解析する。また、発育鶏卵を利用した病態の評価も合わせて行う。
|
次年度使用額が生じた理由 |
次年度6月に開催される国際学会に参加するための参加費、旅費等を既に支払っているが、立替払いであるため、使用額に上がっていない。データ処理をするコンピューターと恒温振とう器の購入を考えていたが、いずれも機種選定に時間がかかり次年度に繰り越す事にした。コンピューターは次年度直ちに購入予定である。 また、本年度はミニゲノム系の実験のみ計画通り進まなかったため、計画より消耗品の使用料が少なかった。しかし、ミニゲノム系も出来上がった事から、次年度は消耗品、特に試薬類の費用が増加する事が明らかであるため、当該助成金と次年度の助成金と合わせ使用する計画である。
|