研究実績の概要 |
サフォードウイルス(SAFV)は、2007年に初めて分離・同定されたヒトに感染するピコルナウイルス科カルジオウイルス属のウイルスである。世界各地で気道炎、胃腸炎、手足口病様疾患、無菌性髄膜炎、脳炎、膵炎など様々な検体から検出されており、近縁のタイラー脳脊髄炎ウイルス(TMEV)やエンテロウイルスと同様に多様な疾患の原因になると考えられている。 本研究では、SAFVの感染受容体を同定することによって、まだ特定されていないSAFVの標的細胞・臓器を明らかにし、SAFVの病原性と疾患の関連について詳細な解析を行うことを目的としていた。 令和元年度は、 CRISPR/Cas9法によるゲノムワイドなヒト遺伝子ノックアウトライブラリーを用いた感染受容体の探索を行った。ヒトの19,050遺伝子を標的とし1遺伝子あたり6つのsgRNAが設計されているsgRNAのプールライブラリー(GeCKO v2 human library)をレンチウイルスを用いてCas9安定発現HeLa細胞株に導入し、HeLa細胞のノックアウトライブラリーを作製した。このライブラリー細胞(Cas9/sgRNA/HeLa細胞)に親細胞株を死滅させられるウイルス力価でSAFVを感染させ、生き残った細胞をSAFV耐性細胞として回収した。それらの細胞から調製したゲノムDNAを鋳型にしてsgRNA部分をPCRで増幅後、次世代シーケンシング(NGS)によりsgRNAの配列を決定した。NGSのデータから、同様にNGS解析した非感染細胞と比較して、存在比が上昇したsgRNAを同定し、統計学的にsgRNAカウント数が有意に上昇している遺伝子を探索した。 その結果、感染受容体およびウイルスの感染・増殖を促進すると考えられる3つの候補遺伝子を得た。 現在、それらの遺伝子について膜タンパク質を中心にSAFV感染における機能を解析している。
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