研究課題/領域番号 |
17K08867
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研究機関 | 徳島文理大学 |
研究代表者 |
畠山 大 徳島文理大学, 薬学部, 准教授 (20514821)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | インフルエンザウイルス / ヌクレオプロテインNP / アセチル化修飾 / ブロモドメインタンパク質 / PAサブユニット / エンドヌクレアーゼ活性 |
研究実績の概要 |
タンパク質は様々な翻訳後修飾を受け,その構造や機能の調節を受けることが知られている.中でも最もよく知られているのが,真核細胞のゲノムDNAと相互作用するヒストンであり,そのアセチル化修飾は転写活性を促進させる.一方,インフルエンザウイルスの一本鎖RNAゲノムはヌクレオプロテイン(NP)と相互作用することから,NPは機能的に「ヒストン様タンパク質」であると言うことができる.そして申請者らは,ウイルス増殖過程においてNPが宿主細胞の異なる2種類のヒストンアセチル化酵素GCN5とPCAFにより,アセチル化修飾を受けることを発見した.さらに,RNAi処理に伴うウイルスRNA転写量を測定したところ,GCN5の発現抑制処理により転写量は減少し,PCAFの発現抑制処理により転写量は増加するという大変興味深い結果を得た.以上より,NPのアセチル化修飾は,ウイルスと宿主細胞の攻防を制御する要因の一つと考えられる.そこで,本研究では,特にアセチル化NPと相互作用するタンパク質に焦点を当て,NPに対するアセチル化修飾の生物学的意義を解明することを目的とする. NPとのインタラクトーム解析により(渡辺ら,Cell Host Microbe, 2014),SMARCA2やSMARCA4といったブロモドメインタンパク質がNPと結合することが示されている.ブロモドメインはアセチル化リジンと結合する性質を持つことから,これらのタンパク質とNPとの相互作用はNPのアセチル化リジンが担っているのではないかと考え,生化学的およびウイルス学的な解析を行っている. また,NPの研究遂行中に偶然PAのアセチル化修飾の存在も発見した.そこで,PAに対するアセチル化修飾の生物学的意義の解明も平行して進める.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
アセチル化NPと,SMARCA2およびSMARCA4の相互作用を,生化学的に検討するに当たり,SMARCA2およびSMARCA4のサイズの異なる部分組換えタンパク質(7種類),およびヒストンアセチル化酵素PCAFとGCN5の部分組換えタンパク質の作成を完了した.プルダウンアッセイを行うに当たり,ヒスチジンタグを除いた部分組換えタンパク質を新たに作製する必要があったためである. また,PAに関しては,上記のPCAFとGCN5が,PAもアセチル化することを見出した.さらに,PAは宿主細胞のmRNAから5'-capを切り取るためのエンドヌクレアーゼ活性をもつが,その酵素活性は,PCAFによるアセチル化修飾で賦活され,GCN5によるアセチル化修飾で抑制されることを発見した.
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今後の研究の推進方策 |
NPの研究においては,作製したSMARCA2とSMARCA4の部分組換えタンパク質を用いて,(1)NPとSMARCA2およびSMARCA4の相互作用活性は,NPのアセチル化によって変化するかの確認,(2)アセチル化NPと相互作用するSMARCA2,SMARCA4以外の宿主因子の同定を行う. PAの研究においては,(1)質量分析によるPA内のアセチル化リジン残基の同定,(2)このリジン残基を変異させたミュータントPA組換えタンパク質の作製,(3)組換えによるPAエンドヌクレアーゼ活性変化の検討,(4)同じリジンを変異させたミュータントウイルスの作製とそれを用いた感染実験を順次行っていく予定である.
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