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2018 年度 実施状況報告書

インフルエンザウイルスNPのアセチル化修飾から見たウイルス-宿主間攻防の機構解析

研究課題

研究課題/領域番号 17K08867
研究機関徳島文理大学

研究代表者

畠山 大  徳島文理大学, 薬学部, 准教授 (20514821)

研究期間 (年度) 2017-04-01 – 2020-03-31
キーワードインフルエンザウイルス / アセチル化修飾 / ヌクレオプロテインNP / RNA依存性RNA合成酵素 / PAエンドヌクレアーゼ活性
研究実績の概要

申請者らは,ウイルス増殖過程においてNPが宿主細胞のヒストンアセチル化酵素GCN5とPCAFにより,アセチル化されることを報告した(J Biol Chem, 2018).本研究では,特にアセチル化NPと相互作用するタンパク質に焦点を当て,NPに対するアセチル化修飾の生物学的意義を解明する.インタラクトーム解析により,SMARCA2やSMARCA4といったブロモドメインタンパク質がNPと結合することが示されている.ブロモドメインはアセチル化リジンと結合する性質を持ち,これらのタンパク質とNPとの相互作用は,NPのアセチル化が担っていることが予想される.そこで,共免疫沈降の手法を用いて,これを確かめることを目的として実験を開始した.2018年度は,FLAGタグを付加したSMARCA2,SMARCA4,NPの組換えタンパク質を作成した.SMARCA2,SMARCA4は大腸菌を用いて作成した.NPは,以前大腸菌で作成したが,発現の課程において既にNPがアセチル化されてしまった.そこで今回は,無細胞系のPUREflexシステムを用いて発現させることに成功した.現在,この組換えタンパク質がアセチル化されないことを確認中である.
また,NPの研究遂行中にPAのアセチル化修飾も発見した.PAのエンドヌクレアーゼ活性は,ウイルス増殖過程において必要不可欠な反応である.我々の研究により,①PAが宿主細胞のアセチル化酵素によってアセチル化を受けること,②PAアセチル化によってエンドヌクレアーゼ活性が賦活化されること,③アセチル化を受けるアミノ酸は19番目のリジン(K19)であること,④PA-K19をグルタミンに変異させ(K19Q),定常的なアセチル化をミミックするとエンドヌクレアーゼ活性が賦活化されることなどを示した.アセチル化によってPAのエンドヌクレアーゼ活性が調節されることが示唆された.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

アセチル化NPと,SMARCA2およびSMARCA4の相互作用を生化学的に検討するに当たり,昨年までは,ヒスチジンタグを用いて免疫沈降を行う予定であった.しかし,ヒスチジンタグでは抗体や磁気ビーズとの親和性が低く,良好な実験結果を得ることができなかった.そこで,FLAGタグを付加した組換えタンパク質の作成に切り替えた.現在までに,SMARCA2,SMARCA4,NPなど,全7種類の組換えタンパク質にFLAGタグを付加することに成功している.
また,PAアセチル化修飾についても,アセチル化によってエンドヌクレアーゼ活性が賦活化されることを示し,アセチル化されるリジン残基(K19)を同定することに成功した他,K19を,恒常的なアセチル化リジンの模倣であるグルタミンに置換(K19Q)すると,同様にエンドヌクレアーゼ活性が賦活化されることを明らかにした.翻訳後修飾によってPAエンドヌクレアーゼ活性が調節されることを報告した例は過去に無く,ウイルス学分野のみならず,生化学・分子生物学の分野にも大きなインパクトを与えられるものと考えている.

今後の研究の推進方策

NPアセチル化の研究に関しては,今後は,作成した組換えタンパク質を用いて共免疫沈降を行う.まずは,PUREflexで発現させたFLAGタグ付きのNPがアセチル化されていないことを確認する.これは,抗アセチル化リジン抗体を使用したウェスタンブロッティングで行う.その後,抗FLAG抗体でアセチル化NPを磁気ビーズに結合させ,さらに,SMARCA2およびSMARCA4がプルダウンされるかどうかを調べる.また,同様の手法を用いて,SMARCA2やSMARCA4以外のタンパク質が,アセチル化NPと相互作用するかどうか網羅的にスクリーニングすることも計画している.
PAアセチル化の研究に関しては,まずはPA-K19QおよびPA-K19Rの変異をもつ組換えウイルスを作成し,ウイルス増殖効率の変化を解析する.その後は,上記のNPと同様,FLAGタグ付きのPA組換えタンパク質も既に作成済みであるので,アセチル化PAと相互作用するタンパク質のスクリーニングを行う.

  • 研究成果

    (7件)

すべて 2019 2018

すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (3件)

  • [雑誌論文] インフルエンザウイルスタンパク質に対する翻訳後修飾2019

    • 著者名/発表者名
      畠山 大
    • 雑誌名

      BIO Clinica

      巻: 34 ページ: 68-73

  • [雑誌論文] Monoamines, insulin and the roles they play in associative learning in pond snails.2019

    • 著者名/発表者名
      Totani Y, Aonuma H, Oike A, Watanabe T, Hatakeyama D, Sakakibara M, Lukowiak K, Ito E.
    • 雑誌名

      Frontiers in Behavioral Neuroscience

      巻: 13 ページ: 65

    • DOI

      10.3389/fnbeh.2019.00065

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Acetylation of lysine residues in the recombinant nucleoprotein and VP40 matrix protein of Zaire Ebolavirus by eukaryotic histone acetyltransferases.2018

    • 著者名/発表者名
      Hatakeyama D, Ohmi N, Saitoh A, Makiyama K, Morioka M, Okazaki H, Kuzuhara T
    • 雑誌名

      Biochemical and Biophysical Research Communications.

      巻: 504 ページ: 635~640

    • DOI

      10.1016/j.bbrc.2018.09.007

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Influenza A virus nucleoprotein is acetylated by histone acetyltransferases PCAF and GCN52018

    • 著者名/発表者名
      2.Hatakeyama D, Shoji M, Yamayoshi S, Yoh R, Ohmi N, Takenaka S, Saitoh A, Arakaki Y, Masuda A, Komatsu T, Nagano R, Nakano M, Noda T, Kawaoka Y, Kuzuhara T.
    • 雑誌名

      Journal of Biological Chemistry

      巻: 293 ページ: 7126~7138

    • DOI

      10.1074/jbc.RA117.001683

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] インフルエンザウイルスRNA合成酵素へのアセチル化修飾による酵素活性調節効果2018

    • 著者名/発表者名
      畠山 大,小松嗣典,齋藤綾香,大西杏奈,槇山今日子,緒方星陵,大槻純男,葛原 隆
    • 学会等名
      第41回日本分子生物学会年会
  • [学会発表] インフルエンザウイルスのPAサブユニットのアセチル化修飾によるエンドヌクレアーゼ活性調節効果2018

    • 著者名/発表者名
      畠山 大,小松嗣典,齋藤綾香,大西杏奈,槇山今日子,緒方星陵,大槻純男,葛原 隆
    • 学会等名
      第66回日本ウイルス学会学術集会
  • [学会発表] インフルエンザウイルスのPAサブユニットのアセチル化修飾に伴うエンドヌクレアーゼ活性調節2018

    • 著者名/発表者名
      畠山 大,小松嗣典,齋藤綾香,大西杏奈,槇山今日子,葛原 隆
    • 学会等名
      第32回インフルエンザ研究者交流の会シンポジウム

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公開日: 2019-12-27  

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