本研究においては、HCoV-229Eに加え、他のヒトコロナウイルス、HCoV-OC43、HCoV-HKU1も臨床分離ウイルスは細胞表面のTMPRSS2を利用して積極的に侵入することを論文報告した。これで我々の仮説「生体内ではヒトコロナウイルスはエンドソーム経路を避ける」ことがが三種のウイルスで確認されたことになる。一方、米国のグループは、中東呼吸器症候群コロナウイルス(MERS-CoV)がゴルジ体のプロテアーゼFurinを利用して細胞侵入することを報告している。我々はこの経路についてもコロナウイルスの細胞侵入を解析する必要に迫られることとなった。本研究では、MERS-CoV及び他のコロナウイルスはFurinを使って細胞侵入しないことを証明し、論文報告をおこなった。またエンドソーム経路を通らないウイルスを作るための、カテプシン解列部位変異ウイルスの作成について検討を行ってきたが、今のところカテプシン解列部位の特定に至っていない。他方、抗ウイルス薬の検索について、既存薬ライブラリーから抗コロナウイルス活性のある薬をスクリーニングしているが、数種のステロイド系化合物に新型コロナウイルスを含む7種のコロナウイルスの感染を特異的に阻害する効果があることを見出している。
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