研究課題/領域番号 |
17K08869
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研究機関 | 国立感染症研究所 |
研究代表者 |
菅野 隆行 国立感染症研究所, 感染病理部, 主任研究官 (50272563)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | ウイルス再活性化 / 細胞間接触 / KSHV |
研究実績の概要 |
エイズカポジ肉腫、特に内蔵型は致命的となる可能性があり、HAART療法が普及した現在でも治療に難渋する症例が存在する。カポジ肉腫は、カポジ肉腫関連ヘルペスウイルス、またはヘルペスウイルス8の再活性化が発症が寄与しており、本研究では生体内のウイルス再活性化を再現していると考えられるカポジ肉腫関連ウイルス感染B細胞株と接着細胞の共培養によるウイルス再活性化メカニズムを解明し、関連シグナル伝達系、責任遺伝子を特定しその阻害薬によるカポジ肉腫発症の予防を目指している。 由来が共通の接着細胞で、共培養による再活性化誘導能が異なる細胞株の発現遺伝子をDNAマイクロアレイにより比較した。細胞内局在、機能についてデータベースによる検索を行い、細胞膜に存在、あるいは再活性化に関わる可能性が考えられる遺伝子群を抽出し、遺伝子導入実験により再活性化誘導の変化を検討した。抽出した遺伝子群のうち、少数で再活性化が誘導されたが、それぞれの遺伝子で誘導される再活性化は、細胞株の違いによる再活性化に比べて誘導率が低かった。共培養する細胞の膜蛋白質の下流で起こるシグナル伝達系も含めた総合的な解析が必要と考えられる。再活性化を誘導できない細胞株に再活性化の抑制性因子(Restriction Factor)が存在する可能性を踏まえ、非再活性化細胞に発現量の多い膜蛋白質についても検討を進めている。 再活性化のキーとなる前初期蛋白質 ORF50 あるいは RTA (replication and transcription activator) の発現動態の経時的解析により、強い活性型と考えられるリン酸化フォームは比較的早い段階で誘導されている可能性が示唆された。共培養開始後、早期に再活性化を決定づける変化が起こっている可能性がある。再活性化を誘導するシグナル伝達系の網羅的な解析を進める必要があると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
共培養による再活性化誘導では、開始早期に強い変化が起こっている可能性を踏まえ、再活性化に関連するシグナル伝達系の網羅的な解析を進める方針である。関連するシグナル伝達系を明らかにすることで、再活性化誘導についての阻害剤の検討もスムーズに開始できると考えられる。 一方、他のヒト細胞との共培養による再活性化の検討、長期培養による細胞間感染成立の系など進めるべき課題もある。順次進めていく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
1) これまでカポジ肉腫関連ヘルペスウイルスの再活性化に関連するとされるシグナル伝達系 RAS, PKC, Calcineurin シグナルについて、また低酸素、酸化ストレス、活性化酸素刺激関連シグナルについて検討する。さらそれらの阻害剤を用いて検討を行う。 2) ヒト培養接着細胞株について、KSHV潜伏感染B細胞の再活性化誘導を調べ、発現遺伝子プロファイルについて検討する。膜タンパク質について責任遺伝子の絞り込みを進める。 3) 長期培養による感染成立については、ウイルス感染細胞と標的細胞のマーカーを明確にする必要があり、検討を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
再活性化誘導責任遺伝子候補についての個別の検討では限界があることが示唆された。共培養開始後早期に起こるシグナル系の検討に方針を切り替える必要がある。 シグナル経路関連遺伝子群に対する抗体、遺伝子ノックダウン、ノックアウトなど解析に必要な試薬、阻害薬等の購入に使用する。再活性化誘導能をもつヒト細胞についてはDNAマイクロアレイによる解析を行う。また細胞マーカーの検討に必要な抗体の購入に使用する。
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