研究課題/領域番号 |
17K08871
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研究機関 | 公益財団法人東京都医学総合研究所 |
研究代表者 |
棟方 翼 公益財団法人東京都医学総合研究所, ゲノム医科学研究分野, 主席研究員 (50420237)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | HBV / 転写因子 / E2F |
研究実績の概要 |
我々は詳細な遺伝子解析を行った結果、B型肝炎ウイルス(HBV)のゲノムDNA上に転写因子E2Fの結合部位候補が5個、遺伝子型間で保存されて存在することを発見した。また、E2F1をノックダウン(KD)した培養細胞では、HBVのX蛋白質と表面蛋白質の発現が抑制されることを見出した。これらの知見は、E2Fファミリーの転写因子がHBVの複製・感染に関与している可能性を強く示唆する。E2F1が宿主のゲノム安定性にも必要であることを考慮すると、HBVのゲノムDNAの肝細胞での維持にE2Fが関与することも十分考えられる為、この現象の分子機構の解明は慢性HBV感染の新たな治療法の開発に繋がることが期待できる。 我々はさらに、E2F結合サイトを有するHBVゲノム中のプロモーターをルシフェラーゼ・レポーター遺伝子に繋いで解析した結果、期待通り、HBVプロモーターが転写因子E2Fの制御化にあることが複数の肝細胞で証明できた。また興味深いことに、複数存在するE2F転写因子のファミリーでプロモーターの応答性に差が出て、活性化タイプのE2Fが強く働いた。これは、肝臓で発現するE2FファミリーをHBVが使い分けていることを示唆している。E2FはCDKやRbとともにパスウェイを形成して、細胞の増殖に関与する因子である。肝実質細胞は肝臓の中では分化した後ほとんど増殖しないため、E2F転写因子のファミリーでも活性化タイプの働きは弱く、抑制化タイプの働きが強いと考えられてきた。しかし、HBV感染等で肝炎が誘発されると細胞増殖がオンになり、活性化タイプが機能する機会が高まると予想される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究計画はここまで順調に進展しており、期待したデータが得られている。今後は更に詳細に分子機構を解析していくことで、HBVとE2Fの肝細胞での相互作用を明かにして行く。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの進捗状況は、当初の計画で予想された通りであることから、研究計画通りに推進していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
使用する試薬がキャンペーン等で予想より安く入手出来たため。 この差額を用いて次年度に消耗品の試薬を購入し、より詳細な解析を行う予定である。
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