研究課題/領域番号 |
17K08875
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
奥山 祐子 東北大学, 医学系研究科, 助教 (50624475)
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研究分担者 |
石井 直人 東北大学, 医学系研究科, 教授 (60291267)
宗 孝紀 富山大学, 大学院医学薬学研究部(薬学), 教授 (60294964)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | GITR / ILC2 / IL-9 / NFκB |
研究実績の概要 |
これまでに我々は、肺組織中のILC2にTNF受容体型T細胞共刺激分子であるGITR (glucocorticoid-induced TNF receptor family-regulated gene)が高発現することを見出した。ILC2は、肺や皮膚、脂肪組織に存在しTh2サイトカインIL-5、IL-13の産生を介してアレルギー性呼吸器炎症、寄生虫感染防御、アトピー性皮膚炎等の病態形成に関与する。本研究は、GITRシグナルによるILC2の活性化制御機構を解明し、これらを標的としたアレルギー性炎症疾患の新規治療法開発につながる基盤技術の確立を目指すものである。 これまでに、GITR欠損マウスにおけるパパイン誘発性肺炎症およびRag2欠損GITR欠損マウスへのIL-33気管内投与による肺炎症は、いずれも野生型マウスと比較して強く抑制され、肺炎症時のILC2の活性化が抑制されることから、ILC2に発現するGITRが肺炎症増悪に必要であることがわかった。肺組織より単離したILC2を用いた実験から、GITRはIL-33シグナルと協調的に作用し、IL-9の産生誘導を介してILC2の増殖、サイトカイン産生を亢進することが示唆された。ILCの機能制御にTNF受容体型分子のシグナル経路が関与することを初めて報告した本知見は、ILCの新たな機能制御機構の存在を示唆するものである。 さらに、IL-33シグナルへのGITRによる増強作用の分子メカニズムについて、in vitroにて検討を行った結果、NFκB、p38、Erkのシグナル伝達経路が関与することがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
In vitroにてILC2をIL-33もしくはGITRアゴニストで刺激すると、NFκB、p38、Erkのリン酸化が誘導されることがウェスタンブロット法による解析によりわかった。そこで、IL-33単独、GITR単独、IL-33+GITR共刺激それぞれにおいて、NFκB、p38、Erkの各シグナル分子特異的阻害剤処理を行った。その結果、いずれの阻害剤処理においても共刺激によるIL-9の転写が抑制され、さらにIL-5,IL-13の遺伝子発現および培養上清中の産生量の増強も阻害剤処理により有意に抑制された。なかでもNFκB阻害剤については、すべてのサイトカイン発現が完全に阻害された。 次に、IL-9とIL-5,IL-13の関係性を詳細に検討した。これまでに、IL-9中和抗体処理によりIL-5,IL-13の産生亢進が抑制されるという結果が得られていた。そこでさらに、IL-13欠損マウス肺組織由来のILC2をIL-5中和抗体存在下でIL-33+GITR共刺激を行った。その結果、IL-5およびIL-13非存在下においても、GITR共刺激によるIL-33刺激依存的なIL-9の遺伝子発現の亢進が認められた。このことから、GITRシグナルはIL-33シグナル依存的なIL-9の発現を亢進し、IL-9がILC2にオートクラインに作用することでIL5,IL-13の産生を亢進させる、という機構が明らかとなった。 以上のように、仮説に一致する実験結果が得られており、本研究は順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
GITRシグナルは肺炎症時のILC2の増殖と活性化を亢進する。定常状態の肺組織中のILC2細胞数はGITR欠損マウスにおいて正常であり、肺炎症発症の前後でILC2におけるGITRの発現レベルは変化しない。肺炎症時にILC2へのGITRシグナルが活性化されるには、GITRリガンド(GITR-L)発現細胞との相互作用が必須であり、GITR-L発現細胞こそが、炎症を惹起する引き金となると考えられる。 これまでに、フローサイトメトリーによる解析では、GITR-L発現細胞は特定出来ていない。mRNA発現については、候補となる細胞を示唆する結果が得られている。そこで今後、GITR-L発現細胞の特定のため、パパイン誘導性肺炎症、IL-33誘導性肺炎症を誘導し、炎症の前後での肺組織中の各免疫細胞におけるGITR-Lの発現をリアルタイムPCR法、およびフローサイトメトリー法にて網羅的に解析する。候補となる細胞をin vitroで培養し各サイトカイン刺激によるGITR-L発現変化を解析し、GITR-Lによる肺炎症制御機序を明らかにする。 さらに、ヒトPBMC由来のILC2において、GITRの発現とサイトカイン刺激による発現変化について解析を行い、アレルギー性疾患の治療標的としての有用性を検証していく。
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