研究課題
本研究では、我々が独自に開発した真菌(アスペルギルス)抗原の長期間反復暴露による慢性気道炎症のマウスモデルを用いて、肺内で誘導されるCD4 組織局在性記憶(Tissue Resident memory T; TRM)細胞による肺線維化の病態制御について解析を進めている。アスペルギルス抗原で誘導されるCD4 TRM細胞について、詳細な解析を進めた。具体的には、これらのCD4 TRM細胞の組織常在性について、(1)Parabiosis (並体結合)の実験による解析、(2)FTY720(リンパ球の血中への移行を阻害する薬剤)を用いた実験による解析を行い、我々の解析する細胞集団の組織常在性を明らかにした。さらに、アスペルギルス抗原で誘導される2種類のCD4 TRM細胞について、遺伝子発現パターンの違いを誘導する分子機序について、エピゲノムに着目して、Assay for Transposase-Accessible Chromatin Sequence (ATAC-Seq)を行なった。 in silicoの解析結果からCD4 TRM細胞の多様な細胞集団の特徴について、トランスクリプトームおよびレギュロームの観点から明らかにした。CD103hiCD4 T細胞の生体内での役割を解析する目的で、抗CD103抗体投与による特異的な細胞集団の除去実験を行なった。その結果、アスペルギルス抗原暴露によって誘導される慢性気道炎症が著明に増悪し、線維化が亢進することが明らかになった。
2: おおむね順調に進展している
本研究では、現在は根治療法のない肺線維症の病態解明をめざし、慢性炎症で肺組織内に誘導されるCD4 組織局在性記憶(Tissue Resident memory T; TRM)細胞による肺線維化の病態制御機構を分子・細胞・個体レベルで明らかにすることを目的に研究を行なっている。今年度は、アスペルギルス抗原で誘導されるCD4 TRM細胞の組織常在性について、(1)Parabiosis (並体結合)の実験による解析、(2)FTY720(リンパ球の血中への移行を阻害する薬剤)を用いた実験による解析を行なった。この結果、アスペルギルス抗原で誘導されるCD4 TRM細胞はホスト個体内に留まり、抗原の再投与で誘導される炎症は、CD4 TRM細胞で十分であることがわかった。以上、我々の解析する細胞集団の組織常在性を明らかにした。さらに、アスペルギルス抗原で誘導される2種類のCD4 TRM細胞について、遺伝子発現パターンの違いを誘導する分子機序について、エピゲノムに着目して、Assay for Transposase-Accessible Chromatin Sequence (ATAC-Seq)を行なった。 in silicoの解析結果から、一度獲得した高発現の特徴的遺伝子群については、長期間生体内で維持されたCD4 TRM細胞では、レギュローム上にその記憶が残っていることを明らかにした。以上、多様な細胞集団の特徴について、トランスクリプトームおよびレギュロームの観点から明らかにした。現在、以上の結果をまとめて論文投稿準備中である。以上、着実な研究進展が認められており、おおむね順調に進展しているといえる。
今後は、CD4 TRM細胞の遺伝子発現のRNA-Seq解析の詳細な検討から肺線維化を誘導する機能候補分子を同定する。また、肺線維症患者の肺組織での組織局在記憶CD4 T細胞の病態制御機構を解明するため、マウスでの実験結果に基づいて以下の解析を行う。(1)診断・治療目的で採取した肺線維症患者の肺組織を用いて、多重染色法と共焦点レーザー顕微鏡、超解像度顕微鏡による組織局在性記憶CD4 T細胞の同定および周辺構造との連関解析を行う。(2)肺線維症患者の肺組織から単離した組織局在性記憶CD4 T細胞の特徴的遺伝子群をRNA-Seq法を用いて解析する。
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すべて 雑誌論文 (8件) (うち国際共著 2件、 査読あり 8件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (13件) (うち国際学会 2件、 招待講演 2件) 備考 (1件) 産業財産権 (1件)
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