研究課題
今年度では、種々の刺激により活性化されたB細胞のアポトーシスに果たすEAF2の役割を解明するために、in vitroの培養系を用いて以下の実験を行った。1)WT及びEAF2欠損マウスより胚中心B細胞を多く含むリンパ節細胞を無菌的に回収し、無刺激並びにF(ab’)2-anti-IgM抗体、CD40リガンド、LPS、BAFF、anti-FAS抗体などの存在下で48時間培養した後、Annexin-Vと7-AADで染色し、生細胞の割合を解析した。その結果、EAF2欠損マウス由来のB細胞は、WTマウス由来のB細胞に比べ、いずれの培養条件下においても生存率が有意に高かった。この結果から、EAF2は、胚中心B細胞のみならず、in vitroで活性化されたB細胞の細胞死も促進することが示唆された。さらに、EAF2がFASによるアポトーシスをも促進することが判明した。2)レトロウイルスベクター(pMX-IRES-GFP並びにpMX-IRES-CD8a)を用いて、LPSで刺激した脾臓B細胞及びB細胞株WEHI231でEAF2を一過性に発現させると、アポトーシスが誘導されることを明らかにした。即ち、EAF2欠損と過剰発現の両方の実験から、EAF2が胚中心B及び活性化B細胞のアポトーシスを促進することを明らかにした。3)BCL-2を発現するレトロウイルスベクターを構築した。脾臓B細胞でBCL-2を一過性に発現させると、B細胞のアポトーシスが抑制されることを確認した。これらの実験で樹立したEAF2によるアポトーシス誘導とBCL-2によるアポトーシス抑制のin vitro培養系を用いて、次年度ではEAF2によるB細胞アポトーシス誘導に果たす役割をさらに詳しく調べたい。
2: おおむね順調に進展している
平成29年度中に実施予定の実験のうち、In vitroでの実験は予定通り行うことができた。一方、In vivoの実験については、マウスの飼育場所不足により、充分な匹数のWTとEAF2欠損マウスを確保できず、実施することができなかった。その代わり、平成30-31年度に予定していたEAF2による遺伝子発現制御およびEAF2とBCL-2ファミリーの機能的相互作用の実験のために、pMX-IRES-BCL-2をはじめ、いくつかの発現ベクターを構築することができた。全体としては、ほぼ計画通り進展している。
次年度では、1)WT及びEAF2欠損マウスのリンパ節細胞の培養実験について、F(ab’)2-anti-IgM抗体、CD40L、LPS、BAFF、anti-FAS抗体の濃度及び刺激時間を変えて実験を行う。さらに胚中心B細胞をセルソーターで分離し、同様な実験を行う。2)レトロウイルスベクターを用いて、B細胞でEAF2単独またはBCL-2とともに発現させ、EAF2によるB細胞アポトーシスがBCL-2によってレスキューされるかどうかを明らかにする。これらの実験により、EAF2とBCL-2の機能的相互作用の有無を解明する。さらにin vivoにおけるB細胞アポトーシスに果たすEAF2の役割や、EAF2が制御する遺伝子群の解析も進める予定である。
今年度は主にin vitroの培養実験を中心に実験を進めたので、比較的少ない費用で研究できた。来年度では、多くのin vivoの実験を行うので、マウスの飼育及び購入費用、さらにマウスに投与する抗原や刺激用の抗体の購入費用など多額な経費を計上する必要がある。そのために、今年度の余剰金を来年度に繰り越して使用する必要がある。
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 4件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 2件)
International Immunology
巻: in press ページ: in press
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