研究課題
大腸の管腔内には腸内細菌が産生するアデノシン三リン酸(ATP)が存在する。ATPは腸管粘膜固有層内に局在する免疫細胞を活性化し、病原体に対する防御応答を誘導する。一方、過剰な免疫細胞の活性化は、腸管組織の破壊につながるため、管腔内のATP濃度は厳密に制御される必要がある。蛍光免疫染色法による解析により、大腸上皮細胞が管腔側に膜型ATP分解酵素E-NTPD8を発現することが明らかとなった。Entpd8欠損マウスでは、糞便中のATP濃度が上昇すること、デキストラン硫酸ナトリウム(DSS)誘導性大腸炎およびアゾキシメタン/DSS投与による大腸炎関連大腸癌が重篤化することが示された。Entpd8欠損マウスの大腸炎重篤化はanti-GR1抗体投与による好中球除去により抑制された。RNA-seq解析により、大腸上皮細胞および好中球を含むミエロイド系自然免疫細胞にはATP受容体であるP2rx4が高発現することが示された。Entpd8/P2rx4二重欠損マウスでは、Eentpd8欠損マウスにおけるDSS誘導性大腸炎の重篤化が抑制された。野生型マウスとP2rx4欠損マウスの大腸好中球を回収し、ATPgS存在下で5時間培養したのち、Annexin VおよびPropidium iodideで染色を行った。野生型マウスの大腸好中球はATPgSによる刺激により細胞死が抑制された。一方、P2rx4欠損マウスの大腸好中球では、ATPgS刺激依存的な細胞死抑制は誘導されなかった。これらの結果より、大腸上皮細胞に発現するE-NTPD8による管腔内ATPの分解は、好中球の寿命延長を阻害し、大腸炎の重篤化を抑制することにより大腸癌の発症を防ぐことが明らかとなった。
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