プラズマ細胞への分化にはゲノムDNAのエピジェネティック修飾、特にDNAの脱メチル化が伴うことが報告されているが、その分子メカニズムは不明である。そこで令和元年度はDNAメチル化がプラズマ細胞分化を制御する機構を解析した。DNAの脱メチル化酵素であるTet2およびTet3を欠損するマウスを用い、Tet2/3欠損B細胞のプラズマ細胞分化をみたところ、Tet2/3欠損B細胞はプラズマ細胞へ分化できないことが判明した。Tet2/3欠損B細胞は刺激後に転写因子IRF4の発現レベルが中程度でとどまり、野生型細胞のように高レベルに発現することはなかった。そこでレトロウイルスを用いてTet2/3欠損B細胞にIRF4を過剰発現させたところプラズマ細胞分化が誘導されたことから、Tet2/3欠損B細胞のプラズマ細胞分化障害の原因はIRF4を高発現できないことによると考えられた。次にプラズマ細胞分化に伴うIRF4遺伝子座CpG DNAのメチル化の変化をbisulfite sequenceにより解析した。そしてプラズマ細胞特異的に、かつTet2/3依存性に脱メチル化される領域、つまり転写開始点から16kbあるいは1.0-1.4 kb上流領域、を発見した。この領域のCpG DNAの脱メチル化によってIRF4が高発現し、それによってプラズマ細胞分化が誘導されることが示唆された。
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