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2017 年度 実施状況報告書

胸腺髄質上皮細胞の分化制御に機能するAIRE遺伝子発現ネットワークの解明

研究課題

研究課題/領域番号 17K08885
研究機関徳島大学

研究代表者

西嶋 仁  徳島大学, 先端酵素学研究所(次世代), 助教 (60425410)

研究期間 (年度) 2017-04-01 – 2020-03-31
キーワードAIRE / 自己免疫疾患 / 胸腺髄質上皮細胞
研究実績の概要

AIREの欠損が臓器特異的自己免疫疾患をもたらすので、AIRE機能を高めることによって自己免疫疾患の病態が改善されるのか検討するために、human AIREを発現するトランスジェニックマウス (Tg) をNOD マウス背景において樹立した。Aire欠失マウスと交配してTgが生理的に内在性Aireを相補する事を確認したが、予期せずして、AIREの発現量に依存して多発性筋炎様の病態を自然発症することを見いだした。OVAをモデル自己抗原としたOVA特異的T細胞の負の選択を観察した結果、human AIREを発現するTgにおいて負の選択機構に障害を認めた。また病態を発症するhomozygous TgではOVA依存的な制御性T細胞の産生が障害されていたが、病態発症しないheterozygous Tgでは制御性T細胞は産生されていた。負の選択機構と制御性T細胞産生に重要な働きを持つ胸腺髄質上皮細胞 (mTEC) の成熟が、human AIREの発現量に依存して阻害されていることが判明した。
mTECのトランスクリプトーム解析を行った結果、内在性Aireの欠失で観察される組織特異的自己抗原 (TRA) の発現低下はTgによって回復することから、mTECにおいて内在性Aireをhuman AIREが機能的に相補する事が個体レベルの病態と一致した。しかし、病態を発症するhomozygous TgではTRAを含めた多様な遺伝子の発現低下が観察された。homozygous Tgが多発性筋炎様の病態発症時期になると抗ミオシン重鎖の自己抗体が観察されるのと相関して、homozygous TgのmTECでは抗ミオシン重鎖遺伝子 (Myh7) の発現低下が観察された。これらの内容について論文報告を行った。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

human AIREを発現するTgで観察される多発性筋炎様の病態は、AIREの過剰な発現によってmTECの自己寛容誘導能力が低下することが原因であることが判明した。すなわち、Tgのゲノム挿入位置が異なるためにhuman AIREの発現量の異なる2ラインのTgを交配して作製したcompound heterozygoteでも病態が発症することから、Tgの挿入による遺伝子破壊ではないことを証明した。human AIREの発現量に依存してmTECの機能障害がもたらされる事を主に以下の2点において検証した。1つは、OVA特異的TCRを発現するマウスとmTECでOVAを発現するマウスとの交配によって、OVA特異的T細胞の負の選択と制御性T細胞産生にhuman AIREを発現するTgで障害があることを、そしてもう1つは、内在性Aireの発現等を指標としたFACS解析とmTECのトランスクリプトームの解析で、mTECの成熟がhuman AIREの発現量に依存して障害されていることを認めた。これらの結果を2018年論文報告した。
また、これらの解析中に興味ある現象を見いだした。Tgの1ラインでNODマウス特有の糖尿病発症、およびラ氏島炎が完全に抑制された。骨髄移植によるキメラマウスを作製した結果、骨髄由来細胞がTgである時に糖尿病抵抗性が確立することを認めている。

今後の研究の推進方策

NODマウスの糖尿病発症に、human AIREの発現が抑制的に機能していることが判明した。骨髄移植によるキメラマウスの結果では、予想に反して骨髄由来細胞がTgである時に糖尿病抵抗性が獲得された。human AIREを発現させるためにMHCクラスIIのプロモーターを用いているため、骨髄由来細胞のAPCである、樹状細胞、マクロファージ、B細胞に焦点を当てて、Tgの発現と糖尿病抵抗性獲得の相関性を明らかにする予定である。B細胞欠損マウス等の骨髄を用いた混合骨髄キメラマウスを作製して糖尿病発症を検討し、糖尿病抵抗性獲得に寄与する細胞集団を特定する。
AIREのターゲット領域を決定する目的で作製したAIRE遺伝子座にGFP融合human AIREをノックインしたマウス (AGF-KI) の解析を行ったところ、homozygous AGF-KIはAire欠失マウス同様に自己免疫疾患を発症しており、GFP融合human AIREは生理的に機能不全であると想定された。そのためにAGF-KIを用いて予定していた研究は抗Aire抗体を用いた解析に変更するための検討を始めている。しかし、AGF-KIはAireプロモーター下でGFP融合AIREを発現するために、Aire発現を検出できる良いレポーターマウスとして使用できる。AGF-KIマウスの脾臓、リンパ節由来の細胞でGFPシグナルを検出しており、骨髄由来細胞でもAireを発現する可能性を認めており、胸腺髄質上皮細胞以外のAire発現細胞の同定を行っている。

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2018 2017

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 3件)

  • [雑誌論文] Paradoxical development of polymyositis-like autoimmunity through augmented expression of autoimmune regulator (AIRE)2018

    • 著者名/発表者名
      Nishijima Hitoshi、Kajimoto Tatsuya、Matsuoka Yoshiki、Mouri Yasuhiro、Morimoto Junko、Matsumoto Minoru、Kawano Hiroshi、Nishioka Yasuhiko、Uehara Hisanori、Izumi Keisuke、Tsuneyama Koichi、Okazaki Il-mi、Okazaki Taku、Hosomichi Kazuyoshi、Shiraki Ayako、Shibutani Makoto、Mitsumori Kunitoshi、Matsumoto Mitsuru
    • 雑誌名

      Journal of Autoimmunity

      巻: 86 ページ: 75~92

    • DOI

      10.1016/j.jaut.2017.09.006

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] Acquisition of the resistance to autoimmune diabetes by the expression of human AIRE in BM-derived APCs in NOD2018

    • 著者名/発表者名
      Matsumoto Minoru、Nishijima Hitoshi、Morimoto Junko、Tsuneyama Koichi、Matsumoto Mitsuru
    • 学会等名
      ThymOz8
    • 国際学会
  • [学会発表] A novel Aire-dependent subset of mTECs with tolerogenic functions is defined by Ly6 family protein expression2018

    • 著者名/発表者名
      Matsumoto Mitsuru、Morimoto Junko、Matsumoto Minoru、 Tsuneyama Koichi、Nishijima Hitoshi
    • 学会等名
      ThymOz8
    • 国際学会
  • [学会発表] Expression of Ly6C/6G defines a novel subset of medullary thymic epithelial cells2017

    • 著者名/発表者名
      Morimoto Junko、Nishikawa Yumiko、Kihara Naoki、Hosomichi Kazuyoshi、Nishijima Hitoshi、Matsumoto Mitsuru
    • 学会等名
      5th Annual Meeting of the International Cytokine and Interferon Society
    • 国際学会
  • [学会発表] Transgenic human AIRE expression in NOD acquired resistance to the diabetes due to the impaired presentation of self-antigens in the pancreas2017

    • 著者名/発表者名
      Matsumoto Minoru、Nishijima Hitoshi、Morimoto Junko、Tsuneyama Koichi、Matsumoto Mitsuru
    • 学会等名
      第46回日本免疫学会学術集会

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公開日: 2018-12-17  

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