研究課題
T細胞の分化と機能に遺伝子発現を制御するエピジェネティック変化が関与していることが知られているが、ヒストンH3K27脱メチル化酵素のCD8+ T細胞免疫応答における役割については、これまで不明であった。そこで我々は、ヒストンH3K27脱メチル化酵素の1つであるUtxの役割を解明するため、T細胞特異的Utxノックアウトマウスを作製し、動物モデルを用いた感染免疫応答の解析を行った。抗原特異的CD8+ T細胞の免疫応答を個体レベルで解析するため、野生型とT細胞特異的UtxノックアウトマウスにOVA抗原を発現するリステリア・モノサイトゲネスに感染させた。その結果、OVA抗原に対する特異的CD8+ T細胞の一次免疫応答には差が見られなかったが、二次免疫応答においてはUtxの欠損により有意に増強することが分かった。さらに、OVAを認識するCD8+ T細胞(OT-1細胞)の移入実験から、Utx欠損CD8+ T細胞では野生型CD8+ T細胞に比べ、リステリア感染後の一次免疫応答時におけるメモリーT細胞への分化が促進することが明らかとなった。また分化解析の結果、Utx欠損CD8+ T細胞ではエフェクター分化関連転写因子であるBlimp1をコードするPrdm1遺伝子の発現が野生型に比べ低下していることが分かった。以上の結果から、感染等により抗原刺激を受けたCD8+ T細胞のメモリー分化が、Utxを介したエピジェネティックな遺伝子発現制御により、抑制されていることが明らかとなった。したがって、Utxの活性を人為的に制御することにより、CD8+ T細胞のメモリー分化を促進できる可能性が示唆された。
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Journal of Immunology
巻: 202 ページ: 1088-1098
10.4049/jimmunol.1801083