研究課題
これまでに、免疫抑制型受容体Siglecが病原性真菌であるAspergillus fumigatusと白癬菌のTrichophyton mentagrophytesを認識することを見出していた。他のアスペルギルス属およびトリコフィトン属に関しても検討を行った。その結果、SiglecはAspergillus flavus、Aspergillus nidulansおよびTrichophyton rubrum、Trichophyton tonsuransも認識したことから、アスペルギルス属およびトリコフィトン属を広く認識することが明らかとなった。一方で、臨床的に感染件数の多い病原性真菌である、カンジダ菌やクリプトコックス菌などは認識しなかった。そこで、アスペルギルス属およびトリコフィトン属に共通するSiglecのリガンドの同定を試みた、Siglecはシアル酸を認識する受容体である。しかしながら、アスペルギルス属やトリコフィトン属をシアル酸分解酵素で処理してもリガンド活性は変わらなかったことから、リガンドはシアル酸ではない可能性が示唆された。菌体を溶媒抽出により親水性画分と疎水性画分に分離したところ、後者にリガンド活性が見出された。疎水性画分をTLCによりさらに分画したところ、非常に疎水性の高い分画にリガンド成分が3つ見出された。今のところSiglecが疎水性のリガンドを認識するという報告はなく、新規のリガンドである可能性が考えられる。
2: おおむね順調に進展している
病原性真菌ライブラリーを拡充してSiglecのリガンド活性を検討したことで、Siglecによる病原性真菌認識の特異性と一般性を明らかにした。また、リガンドの同定を試み、これまでに報告のない疎水性リガンドである可能性を見出した。
TLCにより分画した3つの疎水性リガンド成分に関して、質量分析法と核磁気共鳴法により化学構造を明らかにする。病原性真菌に対する感染防御を担う好中球やマクロファージを用いて、当該リガンドによる免疫抑制活性を検討する。また、これらのリガンドは、アスペルギルス属やトリコフィトン属以外のSiglecに認識されない病原性真菌にも見出されたことから、リガンドの量や局在に関しても検討を行う予定である。
まとめ買い等により物品経費を節約できたために次年度使用額が生じた。交付額の少ない次年度に合算して使用する予定である。
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