研究課題
本研究は、炎症性腸疾患(IBD)の病態に重要な役割を果たすシグナル伝達分子TRAF6に着目し、そのT細胞および腸管上皮細胞での役割を明らかにすることを目的とする。まず、T細胞内のTRAF6がTh17細胞の腸管への遊走能に与える影響を明らかにする。次に、腸上皮細胞株を用いた予備実験でTRAF6シグナル依存的に発現が誘導されたケモカインCCL20, 抗菌ペプチドSLPIの発現を腸上皮特異的TRAF6欠損マウスを用いた動物実験で検証する。さらに、CCL20, SLPIの機能を遺伝子欠損マウスで検証する。T細胞でのTRAF6の役割を明らかにするため、T細胞特的TRAF6欠損マウスを用いて解析し、ケモカイン受容体であるCCR6の発現レベルがTh17細胞上で著しく低下していることを見出した。同様の結果をTRAF6欠損T細胞株でも確認した。さらに、レポーターアッセイによりCCR6プロモターがTRAF6シグナルによって活性化することも見出した。CCR6は腸管で強く発現するケモカインCCL20の受容体であることから、腸内でのT細胞局在に影響することが示唆される。次年度ではこれを明らかにする。また、腸上皮特異的TRAF6欠損マウスを作製するためのCreドライバーマウスを理研バイオリソースセンターより導入したが、Creの発現が腸管以外でも観察され、特異性に問題があることが明らかとなった。そこで、Jackson LaboratoryのVil1-Creマウスを導入し、TRAF6 floxマウスとの掛け合わせを行なった。また、SLPI欠損マウスを研究協力者より分与いただき、ノックアウトマウスの掛け合わせを進めた。さらに、CRISPR/Cas9システムを用いてCCL20欠損マウス、CCR6欠損マウスを独自に作製し、変異マウスを得ることができた。
2: おおむね順調に進展している
初年度では、以下の進捗があり、おおむね順調に進展していると判断した。T細胞でのTRAF6の役割を明らかにするため、T細胞特的TRAF6欠損マウスを用いて解析し、ケモカイン受容体であるCCR6の発現レベルがTh17細胞上で著しく低下していることを見出した。同様の結果をTRAF6欠損T細胞株でも確認した。さらに、レポーターアッセイによりCCR6プロモターがTRAF6シグナルによって活性化することも見出した。CCR6は腸管で強く発現するケモカインCCL20の受容体であることから、腸内でのT細胞局在に影響することが示唆された。また、腸上皮特異的TRAF6欠損マウスを作製するためのCreドライバーマウスを理研バイオリソースセンターより導入したが、Creの発現が腸管以外でも観察され、特異性に問題があることが明らかとなった。そこで、Jackson LaboratoryのVil1-Creマウスを導入し、TRAF6 floxマウスとの掛け合わせを行なった。また、SLPI欠損マウスを研究協力者より分与いただき、ノックアウトマウスの掛け合わせを進めた。さらに、CRISPR/Cas9システムを用いてCCL20欠損マウス、CCR6欠損マウスを独自に作製し変異マウスを得ることができた。
次年度では、T細胞特的TRAF6欠損マウス、腸上皮特異的TRAF6欠損マウス、CCL20欠損マウスおよびCCR6欠損マウスの腸管内におけるT細胞の局在を解析する。特に、これまでCCL20欠損マウスの免疫細胞に関する報告はなく、このマウスについては全身性の表現型を解析する。また、腸上皮特異的TRAF6欠損マウスを用いて腸管におけるCCL20およびSLPIの発現レベルを解析し、生理的にTRAF6がこれらの分子の誘導を担うのか明らかにする。さらに、上記変異マウスにDSS腸炎、TNBS腸炎を誘導し、臨床的指標(経日的な体重の変化、下痢・血便の程度、大腸の長さの変化)を数値化する。この解析により、各分子が腸管炎症に防御的に機能するか生体レベルで検証する。
CRISPR/Cas9システムを用いたCCR6、CCL20欠損マウスの作製が当初の計画より順調に進んだ結果、マウス作製費を削減することができた。当該助成金は請求した助成金と合わせ、主に消耗品および実験動物飼育管理費等として次年度に使用する予定である。
すべて 2018 2017
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (15件) 産業財産権 (1件)
Antiviral Res.
巻: 146 ページ: 1-11
10.1016/j.antiviral.2017.08.007
医学と薬学
巻: 74巻 ページ: 1387 -1392
臨床免疫・アレルギー科
巻: 68 (1) ページ: 79-85