研究課題/領域番号 |
17K08891
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研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
水田 龍信 東京理科大学, 研究推進機構生命医科学研究所, 准教授 (50297628)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | NET / cfDNA / ネクローシス / DNaseγ / DNase1l3 / DNase1 / 好中球 |
研究実績の概要 |
血液中には二つのDNA切断酵素DNaseγ、DNase1が存在し、死細胞DNAの分解を担っている。29年度にはこの二つの酵素が好中球細胞外トラップ(NET)の抑制に関与すること、さらには血中cell-free DNA (cfDNA)の生成または分解に関わる可能性を見出した。 NETは炎症時に好中球から循環血液中へ放出される網目状の構造物である。細胞内顆粒成分と、クロマチンDNAからなり、病原微生物などを捕捉して中和する役割を有し、宿主防御の一端を担っている。しかし、時にはその過剰な放出が血栓症を誘発し、宿主を攻撃する結果となる。我々はこれまで、DNaseγが無いと、NETを形成しやすいことをin vitroの細胞培養実験で明らかにしていた。今年度、ハンブルグ―エッペンドルフ・ユニバーシティーメディカルセンターとの共同研究で、循環血液中のDNase1およびDNaseγ がNETを分解し、血栓形成を抑制することを見出した。好中球増多症や敗血症の際にはNET形成が亢進し、血管を閉塞させ、臓器損傷を引き起こすが、本研究成果により、DNase1およびDNaseγがその予防や治療に使える可能性が示唆された。 cfDNAは血中に存在するDNAで、モノヌクレオソーム単位の断片が多いことから、アポトーシス由来で、CADがその生成酵素と考えられてきた。しかし最近我々は、ネクローシスの際にもモノヌクレオソーム単位のDNA断片が形成され、DNaseγがその生成に主要な役割を担っていることを見出した。またDNase1に関してはcfDNAの生成というよりも、むしろその分解に関与している可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
DNA切断酵素DNaseγ、DNase1が好中球細胞外トラップ(NET)の抑制に関与し、DICなどの治療に応用できることを見出したのは大きな進歩であるが、当初予定した新たな遺伝子改変マウスの作成が遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
新たな遺伝子遺伝子改変マウスの作成には多大な労力と資金が必要であり、現在の状況では作出が困難な状況にある。幸いcfDNA生成のメカニズム解明には現有の遺伝子改変マウスでも解析可能なので、こちらを優先していきたいと思っている。
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次年度使用額が生じた理由 |
予定していたマウスを用いた実験を次年度に延期し、その費用として繰り越した。
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