mTORC1は細胞周囲の栄養状態やエネルギー状態を感知するシグナル伝達分子で、免疫細胞の分化やサイトカインの発現に関わる。研究代表者は、アミノ酸-mTORC1シグナルが、皮膚の表皮角化細胞のGM-CSFの発現調節に関与することを見出した。そこで、本研究では、表皮角化細胞におけるmTORC1を介したGM-CSF発現制御機構の解明と、アミノ酸処理によるGM-CSF発現調節を介した乾癬治療への応用を目指した。 マウス初代培養表皮角化細胞を用いて、mTORC1活性化に関わるアミノ酸として知られるLeu、Gln、Argの過剰添加が、皮膚炎誘導物質刺激に伴うGM-CSF発現に与える影響を調べた。その結果、mTORC1活性は、Len、Gln添加によって増加するが、アルギニン添加では増加しないことが分かった。GM-CSFの発現は、LeuまたはGln添加で増加し、Arg添加では減少傾向にあり、3種同時添加では単独添加より増加することが明らかとなった。また、Leu、GlnによるGM-CSF 発現の正の調節は、mTORC1依存的および非依存的な経路を介していることが示唆された。 一方、培養細胞Pam212を用いた解析では、GM-CSF発現はGlnとArg、mTORC1シグナルによって負に調節されており、mTORC1による調節はNF-κBやAP-1を介している可能性が明らかとなった。 そこで、乾癬と同様にGM-CSFが炎症増悪因子と知られる皮膚炎で、解析が容易な刺激性接触皮膚炎モデルを用い、皮膚炎に伴うGM-CSF発現におけるアミノ酸処理の影響を解析した。その結果、3種のアミノ酸水溶液の塗布によって、皮膚におけるGM-CSF発現の低下と皮膚の肥厚の軽減が観察された。
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