研究課題/領域番号 |
17K08895
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研究機関 | 国立感染症研究所 |
研究代表者 |
小野寺 大志 国立感染症研究所, 免疫部, 主任研究官 (90513143)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 抗体 / ウイルス感染 / 長期生存型抗体産生細胞 / I型IFNシグナル |
研究実績の概要 |
これまで長期生存型抗体産生細胞の形成過程におけるI型IFNシグナルの役割についてウイルス抗原応答時からのB細胞応答を追跡した結果、I型IFNレセプター欠損マウスでは長期生存型抗体産生細胞の前駆体となる胚中心B細胞応答はクラススイッチの指向性が異なっていたが、その形成度合、つまり細胞の絶対数や細胞増殖等に大きな違いは認められなかった。更に末梢リンパ組織において感染初期に形成される抗体産生細胞数に関しても野生型とI型IFNレセプター欠損マウスではほぼ同等であった。このことから、I型IFNシグナル欠損マウスにおいて感染後期に著減する原因として骨髄ニッシェへの遊走過程、もしくはこのニッシェにおける長命型抗体産生細胞の維持過程に問題があることが推察された。このため、ウイルス感染後、骨髄におけるウイルス特異的抗体産生細胞数を経時的に追った。その結果、感染初期においては抗体産生細胞の骨髄への遊走割合は野生型とI型IFNシグナル欠損マウスでそれ程大きな違いはないものの、I型IFN欠損マウスでは感染後期になるに従い経時的に骨髄における長期生存型抗体産生細胞数が減少することが明らかとなった。 このことから、I型IFNシグナルが長期生存型抗体産生細胞の骨髄ニッシェにおける生存維持過程に関与することが強く示唆された。長期生存型抗体産生細胞の維持機構には抗体産生細胞が骨髄ニッシェにおいてストローマ細胞や好酸球、また巨核球などから供給されるIL-6, APRIL等のシグナル因子が必須であることが報告されていることから、I型IFNシグナル欠損によってこれらの因子に影響がないかどうか、つまりI型IFNシグナル欠損による長期抗体産生細胞の著減がB細胞内因性か外因性のどちらのI型IFNシグナルによるのかを明らかにする必要がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
I型IFNレセプター欠損マウスとインフルエンザウイルスHA特異的B細胞抗原受容体マウスとの繁殖が順調に進まなかったため、I型IFNシグナルの長期生存型抗体産生細胞への維持過程への影響におけるB細胞内因性、外因性を判断する実験が進んでいない。
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今後の研究の推進方策 |
今後、このI型IFNシグナル欠損マウスにおける長期生存型抗体産生細胞の生存維持への影響がB細胞内因性のI型IFNシグナルによるのか、その他の細胞のI型IFNシグナルが間接的に影響しているのかを明らかにするために、I型IFNレセプター欠損インフルエンザウイルス特異的B細胞抗原受容体ノックインマウス由来のB細胞の養子移植を行い、これらのB細胞のウイルス感染後の抗体産生細胞への分化過程、骨髄での維持過程を追跡する。 また、昨年度立ち上げたレンチウイルスベクターを用いた初代培養系B細胞への遺伝子導入法によって、導入遺伝子による長期生存型抗体産生細胞の形成維持への影響を追跡できるかどうかをポジティブコントロールとなる遺伝子群(Mcl1, IL6R, ZBTB20, Irf4等)を導入することで検証し、サブトラクション遺伝子ライブラリーからの候補遺伝子スクリーニングの基盤技術の確認を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
長期生存型抗体産生細胞の維持機構におけるI型IFNシグナル関連遺伝子群をスクリーニングするためのマウスの交配が順調に進んでいないため、このスクリーニングに使用する次世代シークエンスに関わる実験を次年度に繰り越すため。
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