研究課題
本年度は長期生存型抗体産生細胞の形成過程においてどの細胞系列にI型IFNシグナルが入ることで長期生存型抗体産生細胞の形成が増強されるのかを養子免疫細胞移植法により、その責任細胞の特定を行った。その結果、RAG1KOマウスをレシピエントとした場合、移植したBリンパ球においてI型IFN受容体を欠損している場合に長期生存型抗体産生細胞の形成が減弱しており、更に、RAG1KOマウスxI型IFN受容体KOマウスをレシピエントとした場合にはI型IFNシグナルが正常なBリンパ球を移植した場合のおいても長期生存型抗体産生細胞の形成が減弱していることが明らかとなった。このことより、I型IFNシグナルがB細胞内因性、もしくはT細胞以外の細胞に供給されることが長期生存型抗体産生細胞の形成に重要であることが明らかとなった。さらに、このI型IFNシグナルの下流の制御因子を同定するため、正常B細胞とI型IFNシグナル欠損B細胞由来の抗体産生細胞のcDNAライブラリーを作製し、サブトラクション法によって、I型IFNシグナル欠損B細胞に比して正常B細胞で発現上昇している遺伝子ライブラリー、また逆にI型IFNシグナル欠損B細胞において発現が発現上昇している遺伝子ライブラリーの作製を行った。これらのcDNAライブラリーをin vivo fate mappingシステムに導入するために、レンチウイルスによる初代培養Bリンパ球への遺伝子導入法の整備を行った。また、CRISPER-Cas9のシステムによって、誘導的にB細胞から目的遺伝子を欠損させるためのTamoxifen誘導型ノックアウトレンチウイルスベクターを作製し、その誘導的ノックアウト法の精度確認を行った。しかし、同一ベクター上でCas9とsgRNAを発現するコンストラクトのデザインではターゲット遺伝子の誘導的ノックアウトが不完全であったことから、すでに全身的にCas9を発現しているTgマウスを用いてそれ由来のBリンパ球にsgRNAを導入する方法を検討する必要があることが明らかとなった。
3: やや遅れている
当初予定していた誘導的遺伝子欠損法(レンチウイルスによりCas9, sgRNAを同時にBリンパ球に導入する方法)によるターゲット遺伝子のノックアウト効率が不完全であることから、ノックアウトされていないBリンパ球からのリークによりコントロールB細胞との長期生存型抗体産生細胞の形成度合の比較が困難であったことから、誘導的遺伝子欠損法の見直しを迫られている。今後、全身性にCas9が発現しているマウスを導入することでこの問題点を解決できる可能性があることから、これを検討する予定である。
当初予定していたレンチウイルスを用いた誘導的遺伝子欠損法の遺伝子ノックアウト効率が不完全であることから、実験系の見直しを迫られている。全身性にCas9を発現するマウス由来のBリンパ球を用いることで導入したsgRNAによるターゲット遺伝子の破壊効率の上昇が見込まれることから、今後このマウスを導入し実験系の検証を行う予定である。またサロゲートとして、誘導的に遺伝子発現を行える発現ベクターの構築も進めていることから、gain of functionの方向からも長期生存型抗体産生細胞の形成におけるBリンパ球のI型IFN下流因子の同定を進めていく。
実験系の見直しを迫られたため、本年度に新たな遺伝子組換えマウスを導入する費用として繰り越す。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 2件、 査読あり 2件)
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