研究課題
NQO1欠損マクロファージではLPS誘導性IL-6産生がコントロール細胞に比べ著しく高くなることが判明していたが、今回そのメカニズムの詳細を明らかにした。LPS刺激により誘導されるTNF-aやIL-1産生はLPSシグナル下流ではたらくNF-kBにより直接的に誘導される。一方で、IL-6やIL-12産生はNF-kBにより誘導される核内転写因子IkBzを介して誘導されることが報告されており、LPS誘導性IL-6産生は2段階制御を受けている。これまでの研究成果により、in vivoにおけるLPS投与実験においてもNQO1欠損マウスおよびPDLIM2欠損マウスにおいてコントロールマウスよりもLPS感受性が高くなっており、血中IL-6量も高値を示していることを明らかにした。昨年度は野生型(WT)あるいはNQO1欠損マクロファージをマウスにトランスファーした後、LPS投与実験を行ったところ、NQO1欠損マクロファージをトランスファーした群ではコントロール群に比べLPS感受性が高くなっていた。これらの結果は生体内においてもマクロファージ由来のNQO1がLPS応答の抵抗性において重要であることを示唆している。また、LPSと同様に自然免疫を活性化させるNodリガンドやHMGB1によるIL-6誘導にはNQO1は関与していないことを明らかにした。その原因として、NodリガンドやHMGB1はIkBzを介さずにIL-6を誘導していることも発見した。一方で、IL-17産生性ヘルパーT細胞(Th17)において、NQO1の発現が上昇し、IL-17産生を抑制していたことから、Th17細胞分化においてもNQO1が重要なはたらきをしていることが示唆された。
1: 当初の計画以上に進展している
LPSにより誘導されるIL-6産生において、NQO1の作用機序を明らかにした。また本研究成果は、J Exp Med. 215: 2197-2209, 2018.に掲載されている。また本研究成果は2017年 第46回日本免疫学会学術集会においてベストプレゼンテーション賞を受賞した他、本年度の本研究所主催の研究所夏季リトリート2018において最優秀賞を受賞している。以上のことから本研究の進捗状況は計画より進んでいるものと思われる。
Nqo1酵素活性を制御できるNqo1リガンドは複数存在しており、これらNqo1リガンドの中からマクロファージにおいてLPS誘導性IL-6産生を抑制できるものを同定する。具体的にはWTおよびNqo1 KOマクロファージをLPSとNqo1リガンドで処理し、上清中のIL-6量をELISAで測定する。WT細胞においてIL-6産生を抑制できるNqo1リガンドが同定されれば、マウスにLPSやリステリア感染によるエンドトキシンショックを誘導し同定されたNqo1リガンドによる生存率の改善や血中サイトカイン量の減少を確認する。さらにT細胞においてNQO1が誘導され、T細胞文化にも関与している結果が得られていることから、T細胞におけるNQO1の作用機序に関しても明らかにしていく。
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J Exp Med.
巻: 215 ページ: 2197-2209
10.1084/jem.20172024.
http://plaza.umin.ac.jp/~suzukih/cgi-bin/lab/index.cgi