研究課題
医薬品等のシーズ開発は、アカデミアが主体となり、トランスレーショナル・リサーチ(TR)の推進が国家的課題である。本邦では、医師の大学院への進学、特に基礎医学系への進学が研修医制度導入後激減し、基礎研究の衰退が懸念されている。そのため、欧米と同様にnon-MD研究者の役割が重要となると推測される。本研究では、TR推進のための基礎研究の充実、人材の育成を見据え、大学院における実態を調査し、有効な教育目標や教育項目を設定することを目的とする。平成29年度は、①全国国公私立大学院のシラバス・カリキュラム調査、②海外情報の収集、③既存のシラバスとの比較、を実施した。①のシラバス・カリキュラム調査では、国立:52大学、公立:49大学、私立:139大学を対象とした。専攻別では702専攻が対象となり、このうち、国立:281専攻(40.0%)、公立:103専攻(14.7%)、私立:318専攻(45.3%)であり、シラバスが入手可能であったのは、346専攻で、国立:148専攻(42.8%)、公立:50専攻(14.4%)、私立:148専攻(42.8%)であった。シラバス内にTRに関する講義(医療開発に関連しない生物統計等は除く)を確認できたのは、35専攻で、国立:23専攻(65.7%)、公立:1専攻(2.9%)、私立:11専攻(31.4%)であった。シラバスの記載を含めてデータベースを作成した。②では米国のCTSA (Clinical and Translational Science Awards)の機関を調査した。こちらではシラバスの掲載ではなく、講義の内容を掲載している場合が多く、掲載方式が多様であるため、平成30年度に欧州と合わせて集計を行う。③については、先端医療実施機関の職員向け標準シラバスと比較し、掲載内容以外の項目が今回調査に含まれていないことを確認した。
2: おおむね順調に進展している
平成29年度は、①全国国公立医歯薬看護系大学院のシラバス調査、②海外情報のとりまとめ、③標準シラバス案の作成が実施予定項目であった。①については私立大学まで広げて検索し、当初予定よりも広範囲に調査を行った。②はホームページにて情報を収集した。③は研究代表者が先端医療開発を行う医療機関の職員向けに作成したシラバスを元に①と検討した。このように当初計画通りに進んでいる。
平成30年度は、下記の①から③の項目を実施する。①全国国公立私立医歯薬看護系大学院のシラバス調査を継続して実施する。平成29年度に作成したリストに基づき、ホーム・ページ等の公開情報にてシラバスを入手する。シラバスは研究代表者がチェックし、先端医療開発、TR、臨床試験に関連した授業/演習をピックアップする。シラバスから収集・入力する内容は、講習・演習名、対象者、単位数、講習・演習の項目、教育目標、授業内容、テキストとする。②海外情報のとりまとめ:平成30年度は主としては欧州の情報をとりまとめる。欧州では企業治験あるいは国の予算で実施される大規模臨床試験を実施する機関がほとんどであり、TRを実施している機関は、ドイツの再生医療実施大学グループ、ライデン大学、パスツール研究所等となる。これらの機関の大学院教育情報を収集し、米国と比較すると共に、標準カリキュラム作成に活用する。③標準シラバス案の作成:昨年から引き続き研究代表者が担当している講義においてシラバス案が活用できるか検討し、学生からのアンケートを回収し、フィードバックを案に反映する。また、ARO協議会あるいは関東甲信越の大学病院臨床試験アライアンス等の教育担当者、あるいは「先端医療開発を担う人材養成のための標準化教育プログラムの策定と実戦」の研究者から案について意見を聞く機会を設定しフィードバック情報として活用する。
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