研究課題/領域番号 |
17K08924
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研究機関 | 自治医科大学 |
研究代表者 |
松山 泰 自治医科大学, 医学部, 准教授 (60458320)
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研究分担者 |
淺田 義和 自治医科大学, 医学部, 講師 (10582588)
岡崎 仁昭 自治医科大学, 医学部, 教授 (40285789)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 自己調整学習 |
研究実績の概要 |
本年度の目標は、東アジアの医学教育文化の中でも、高い自己調整学習力(self-regulated learning:SRL)を有している特定の学習者が、どのように動機付け、学習方略、自己省察の能力を獲得しているのかを明らかにすることであった。 我々は、東アジアにおける高いSRL学習者として、学習資源が限られた環境においても中途離脱せずに地域医療に従事している自治医大卒業医師に注目した。先行研究では自治医大生のテストの復習における自己学習力の欠如が示されたため(Matsuyama et al. BMC Med Educ. 2016;16:245)、卒業前後の学習文脈の違いがSRLを促進したり抑制したりすることが予想された。 そこで自治医大卒業生を主体としたへき地勤務医(10名)と自治医大2~6年生(11名)とに、自己学習の様子を日誌として記録してもらい、またインタビューにて自己学習の詳細を聴取した。自己学習の対象は「はじめて存在を知った、もしくは遭遇した疾患」に限定して情報を収集した。インタビュー音声はテキスト化し日誌中の文章とともに、constructivist grounded theoryに基づいて解析した。研究の参加人数はdata saturationに達するまで増やし、前述した人数となった。 結果、能動的学習が育まれにくい東アジアの医学教育文化の中でSRLを促進するためには、①自分のアイデンティティの特異性を認識できる環境、②アイデンティティを実感できるhigh-stakesな課題、③課題に適応するための方略選択、が重要であることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定から研究の対象者を一部変更したが、東アジアの医学教育文化の中でSRLを促進するために必要な要素が特定され、第一報として論文発表することができた。 また、特定された卒後教育環境におけるSRLの促進要素が卒前教育環境においても機能し、自己学習でのSRLを促進させることは可能かを検証中である。この研究について、すでにデータの収集と解析とが終わり論文化している。 一方、グループ学習におけるSRLの分析については、データを収集して解析し国際学会にてその一部を発表したものの、論文化に至るまでの十分な検証はまだできておらず、当初の予定より遅延している。
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今後の研究の推進方策 |
東アジアの医学教育という文脈で、少なくとも自己学習における自己調整学習力を促進させる要素が明らかとなってきた。今後はそれらを含んだ学習プログラムを確立し、実際に卒前教育において実施可能であり有効かどうかを検証していく。 具体的には平成30年度の目標として、インストラクショナル・デザインの理論を取り入れながら、学習プログラムを確立し、試行的に実施してプログラム評価を行いたい。また、平成31年度は、プログラム評価に基づいて確立したプログラムの改善を行い、その上でプログラム参加群と非参加群とにおいて、学習者の動機、学習方略、自己省察力、実際の獲得した知識・技能・態度などのアウトカムに違いがみられるかを検証したい。
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