研究課題/領域番号 |
17K08925
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研究機関 | 国際医療福祉大学 |
研究代表者 |
赤津 晴子 国際医療福祉大学, 医学部, 主任教授 (40791504)
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研究分担者 |
吉田 素文 国際医療福祉大学, 医学部, 教授 (00291518)
北村 聖 国際医療福祉大学, 医学部, 教授 (10186265)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | アクティブラーニング / 器官別統合講義 |
研究実績の概要 |
一方的な知識の伝達を目的とした授業形態を受動的学習と呼ぶならば、アクティブラーニングとは教員と学生、そして学生間のディスカッションを通し、知的に成長する場を創り、学生が主体的に問題を発見し解決策を見いだしていく能動的学習である。アクティブラーニングを具体化する為の手法の名称にはProblem-based learning (PBL), Team-based learning (TBL),Case-based learning (CBL), Flipped classroom(反転授業)等幾つもあるが、あくまでも学生主導という共通点がある。 アクティブラーニングにより、学生の学習効果と意欲が高まるという報告は多数あるものの、アクティブラーニングに対する教員の理解、授業計画、教材開発のノウハウには大きな差がある。本研究では臨床実習前医学部卒前教育にアクティブラーニングを浸透させる為の問題点を明確化し、医学部1年生3学期から2年生の1、2学期に本学で行われる10の器官別統合講義全てに、学習効果と学習意欲を高める効果的なアクティブラーニングカリキュラムを構築、実施し、その評価をすることを目的とする。 平成30年度では2017年4月に入学した本学1期生が2年生の1年間の学習を終了した為、医学部1年生3学期から2年生の1、2学期に本学で行われる10の器官別統合講義の全てがはじめて行われた。そこで実際の各科目におけるアクティブラーニング導入度、アクティブラーニングによって学生の学習意欲や教育効果が高まったか、そしてアクティブラーニング導入にあたっての問題点の整理、分析をおこなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
大学からのアクティブラーニング導入要請を受け、10の器官別統合講義(循環器、呼吸器、消化器、内分泌・代謝、腎泌尿器、婦人科、運動器・皮膚・膠原病、脳神経・精神科、感覚器、血液)各科目責任者、授業担当者は準備期間を経て様々なアクティブラーニングをそれぞれの科目で試みた。一方、学生は各科目終了時に匿名で科目アンケートに回答した。アンケートでは10の器官別統合講義それぞれにおけるアクティブラーニング導入度、アクティブラーニングによって学生の学習意欲が向上したか、教育効果が高まったか等の問いに6段階で学生は回答した。 学生から見たアクティブラーニング導入度を6段階評価(「とても思う」、「思う」、「やや思う」、「あまり思わない」、「思わない」、「全く思わない」)で分析した所、「とても思う」と回答した学生の率は科目によって6%から 44%、「とても思う」又は「思う」と回答した学生の率は26%から84%とばらつきが見られた。学生から見たアクティブラーニング導入度を1から6(6=アクティブラーニング導入度が一番高い)で科目別に数値化すると10科目平均は4.5、最高が5.24、最低が3.11であった。アクティブラーニング導入度と学生のやる気向上、学習効果向上の間には非常に高い相関が認められた。 一方平成29年度に1年生1、2学期の基礎医科学科目でアクティブラーニング導入を試みた際に遭遇した問題と同様な問題がこの10の器官別統合講義にアクティブラーニングを導入した上でも明らかになった。器官別統合講義の科目担当教員からのヒアリングの結果明確になった主な問題は、アクティブラーニングに必要な教室外の事前学習時間を学生が確保することが時間割上困難である事、そして授業担当教員数不足の為に教員の監督が届く小グループ活動を行う事が困難である事の2点であった。
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今後の研究の推進方策 |
アクティブラーニングを奨励した10の器官別統合講義において、程度の差はあれ、それぞれ工夫をこらしながら1年目でありながらアクテイブラーニング授業が実際導入された。この経験から、臨床実習前医学部卒前教育においてもアクティブラーニングが学生の授業に対するやる気や学習効果向上につながることが明確になった。一方、タイトな時間割の中でアクティブラーニングが成立する為に必要な事前自習学習時間をいかに確保するか、そして限られた教員数でいかに実質のある小グループ活動を回すことができるのか、といった2つの課題が浮き彫りとなった。これらの問題の解決策を本年度の研究課題とし、解決策を探りながら2回目となる今年度の10の器官別統合講義でより改良されたアクティブラーニングを実施し、再びその評価を通して、臨床実習前医学部卒前教育においてアクティブラーニングを系統的に導入するより効果的かつ効率的なカリキュラム構築を目指したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
10の器官別統合講義全てにおいてアクティブラーニングを系統的に導入するに際し、すでに欧米で開発されている市販のアクティブラーニング教材購入を当初計画していた。しかし様々な市販の教材を調査した結果、昨年度使用を検討した教材購入にあたっては毎年教材利用金が発生し、研究費を使って1回の支払いで購入する形態での継続利用は無理であることが判明した。従って市販の教材購入を昨年度は見送った為に次年度使用額が生じた。今年度は、継続利用金が発生しない市販の良いアクティブラーニング教材探しを続けていく計画である。
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