一方的な知識の伝達を目的とした受動的学習に対し、アクティブラーニングとは学生が主体的に問題を発見し解決策を見いだしていく能動的学習である。アクティブラーニングにより、学生の学習効果と意欲が高まるという報告は多数あるものの、アクティブラーニングを日本の医学部カリキュラムに系統的に導入している報告は乏しい。本研究では臨床実習前医学教育にアクティブラーニングを浸透させる為の課題や問題点を明確化し、効果的なアクティブラーニングカリキュラムを構築、実施し、その評価をすることを目的とした。準備期間を経て、各々の教員が2017年度、2018年度にそれぞれに試みたアクティブラーニングに対する学生からのアンケート調査結果を分析した所、本学においてもアクティブラーニング導入度と学生のやる気向上、学習効果向上の間には相関が認められた。一方で課題も明らかになった。アクティブラーニング、特に反転授業を実施する為には学生の事前自習時間が不可欠でありながら、本学の時間割は1限から6限まで毎週35コマ中約32コマに必須科目が入っており、学生の自習時間がほとんど取れないと言う問題が明確になった。その一方で、自習時間不足であってもシミュレーション教育を導入する事により、学習効果と意欲向上を高めるアクティブラーニング授業を行う事ができる事も明らかになった。そこで2019年度以降、よりシミュレーション教育を取り入れた、そして自習時間を増やした新カリキュラム作成に向けて検討を続けた。しかし、2020年度、2021年度は新型コロナウィルス蔓延の為、計画実現が困難となったが、2022年度には対面授業全面再開となり、シミュレーション教育の充実をはかると同時に、完成年度を迎えカリキュラムの大幅変更が可能となった為、新カリキュラム準備を終え、2023年度から自習時間を増加させた新カリッキュラムを実施した。
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