研究課題
海外の評価尺度を参考に、新聞・週刊誌・ネットメディアの医療健康記事を題材に、評価手法、指標の設定について妥当性、一致率および医療関係者の間との認識の相違について明らかにすることで、医療報道の質向上に資する手法の検討を行った。30年度は記事を用いた評価作業および評価軸についての集中的な議論を踏まえて、評価指標の公開を行うとともに、指標の妥当性評価を行った。(1)医療健康報道の評価手法の確立30年度は29年度までに試作した評価軸の作業を集中的に取り扱った。臨床研究の成果の発信(糖尿病の大規模臨床試験)、放射線災害の健康影響、最先端の医療技術(iPS細胞・再生医療)、個別化医療(がんゲノム医療)をテーマとして、実際の報道記事を用いて40人ほどの評価者による議論を行った。「新規性」についての評価は高かった一方で、「弊害(副作用・コスト)」「あおり・病気づくり」「情報源」「見出しの適切性」については評価が分かれる結果となった。患者と対象とする臨床試験や先端医療、市民を対象とする低線量被ばく、個別化医療など社会的な議論が求められる話題など、読み手の問題意識や記事の目的によって求められる基準が異なること、科学技術や医療保険制度など社会的な視点を取り入れることの必要性が明らかとなった。(2)医療健康情報発信とメディアリテラシー向上に向けた推奨の検討と提示医療健康報道に関する信頼性、期待に関するアンケートを継続的に実施した。評価ツール簡略版を作成し公開、29年度の関係をもとに医療情報関連学会に加え、肺癌学会や患者支援団体を対象としたメディアドクター演習を実施した。記事の読み方や読み解き方、情報作成プロセスを踏まえた伝え方、評価活動の必要性など得るものが多いなど好意的な感想が多く寄せられた。教育や演習形式によるヘルスコミュニケーション、リテラシー教育にも実践可能と考えられた。
2: おおむね順調に進展している
評価手法の検討およびウェブサイトでの活動記録の公開を実施している。評価軸の改訂版の評価チームを構成しており、研究実施期間に具体的な検討プロセスおよび検討結果を併せて提示できるよう活動を継続する。
当研究班の評価手法の妥当性検証・評価情報発信モデルの試行と運営を引き続き実施していく。オンラインメディアや大手新聞の配信記事に加え、SNSと連動し、メディアドクターの活動について紹介されるなど、メディアや一般の方向けに認知を広げる活動も継続している。ヘルスリテラシーの意義や健康医療を正しく理解することの重要性についても、医療関連団体だけでなく、メディアや社会学関連団体とも連携を指向する。医療や健康に関する信頼性の向上とともに、その質を評価する活動の重要性が高まっており、研究の社会への還元や国民にわかりやすい成果の発信が必要である。患者だけでなく一般の方が健康医療報道に接する機会が増えることもあり、こうした取り組みはさらに重要になると考えられることから、関連メディアや学会への参加、投稿を通して研究成果を提示する。ウェブサイト(メディアドクター研究会 http://mediadoctor.jp/)およびソーシャルネットワーキングサービス(Facebook)を開設しており、引き続き活動記録および評価結果を発信していくとともに、双方向のメリットを活かしてアンケートやフィードバックを得られるための更新を行う。一方で、メディアや広報担当者などを対象としたセミナーを継続し、科学的根拠の考え方、臨床試験や研究成果の読み解き方の基礎講座を開設し定期実施し、そのフィードバックを発信活動に活用する。
研究計画は概ね予定通り進捗している。研究成果の発信に支弁する予定としている。
すべて 2018 その他
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (5件) 備考 (2件)
J Palliat Med.
巻: 21 ページ: 751-765
10.1089/jpm.2017.0481
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