研究課題/領域番号 |
17K08929
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研究機関 | 帝京大学 |
研究代表者 |
福田 八寿絵 帝京大学, 医療共通教育研究センター, 准教授 (60625119)
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研究分担者 |
齋藤 百枝美 帝京大学, 薬学部, 准教授 (70439561)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 医療行動学 / 医療薬学 / 高齢者医療 / リスクコミュニケーション / 医療・福祉 / 行動変容 / 安全性 |
研究実績の概要 |
医薬品のリスクをいかにわかりやすく伝え、情報の受け手がリスクを回避できるような行動につなげていくか、行動変容を起こす動機付けとするのかは喫緊の課題である。高齢患者は、視力や認知機能の低下などの問題が生じやすい。 医薬品副作用情報提供が医薬品に対する恐れやアドヒアランスの低下を招き、適正使用や副作用の早期発見、受診行動に結びつかない場合もある。患者自身の社会的経済的、心理的背景、阻害要因の解明が喫緊の課題となる。また、複数の診療科を受診したり、複数の医薬品を服用している場合もあり、医療者は、情報提供の在り方を検討する必要がある。 そこで、研究代表者は、高齢者など認知機能の低下している患者に対し、医薬品のリスクコミュニケーションツールに関する海外の事例や法制度についてまず、先行研究の文献調査を行った。海外文献の調査により、リスクコミュニケーションツールの1つとして誰が見てもひとめで分かりやすい絵文字(ピクトグラム)の活用の可能性が示唆された。医薬品警告表示の事例として国内外において高齢者の自動車運転事故が増加し自動車運転に影響のある医薬品を高齢者が服用していることから、自動車運転に影響のある医薬品の注意喚起、リスクコミュニケーションツールとしてピクトグラムの使用に焦点を当てることとした。 先行研究調査により、アメリカ、欧州においてピクトグラムを自動車運転の影響のリスクに応じたピクトグラムを使用することが義務づけられていることが明らかとなった。そこで、共同研究者とともに日本版自動車運転の警告表示のためのピクトグラムを新規に作成、開発し、その有用性と活用法について情報の発信者からの評価と情報の受け手からの評価を検討中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成29年度に高齢者向け医薬品情報提供文書の作成のための先行研究調査をPubmed データベース、医中誌データベースを用いて国内外の副作用情報提供手法に関する先行研究調査により、研究動向、現状の把握した。国内外の文献資料による調査が順調に進められた。 また、学術交流、ヒヤリング等による情報収集、先行研究をもとにFDA、EUにより作成が義務付けられている患者向け警告表示をもとに新規の警告表示の作成を行った。 共同研究者、研究協力者との研究会、会議により、患者のための情報提供ツールの検討を行い、新規の警告表示・注意喚起のためのピクトグラムの原案を作成、開発中である。 ピクトグラムの作成や検討は、試行錯誤を繰り返し、より良いものとするため、時間を要したが、おおむね警告・注意喚起に有用な基本となるものを作成することができたと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
現在、開発中のピクトグラムの有用性と課題をリスクコミュニケーションの対象者である患者とリスクコミュニケーションツールの使用者である医師、薬剤師に対するインタビュー調査により析出する。 インタビュー調査によって明らかとなった課題をもとに警告表示、患者情報提供文書をさらに改良する。 警告表示、患者向けリーフレットの個別化(テーラーメード)についても検討を行うためのも患者視点による情報提供ツールの評価を行う。 この評価をもとに高齢患者のニーズに合った副作用警告表示(Warning Labeling,患者向けリーフレットなどプロトタイプの提示と患者視点による評価、心理的影響、アドヒアランス行動、満足度への影響評価を行うことにより、薬の適正使用と副作用早期発見に資する高齢者とその家族に対する安全性情報提供ツールを開発する。
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次年度使用額が生じた理由 |
欧州の状況について海外調査を行う予定であったが、イギリスのEU離脱により、EMAの移転決定があったため、海外ヒヤリング調査を行わなかった。そこで、次年度使用額が生じた。 また、警告表示のためのピクトグラムの作成、検討に時間を要したため、医療者や患者に対するアンケートの実施が平成30年度になった。しかし、会議を開催し、基本的な骨格が決定しているので平成30年度に海外調査や学会報告、学術論文等の研究成果の報告を行う予定である。
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