研究実績の概要 |
高齢患者は、認知機能や視覚や聴覚能力が低下するため、医薬品の安全性にかかわる情報の収集や理解が不十分になりやすい。また、心臓病、高血圧、糖尿病など慢性疾患や不眠症などを抱え、多剤服用の問題も生じやすい。一方、安全性の情報理解度やリスクの回避、服薬行動・アドリアランスへの影響についても個人差が大きい。さらに独居の高齢者の服薬をチェックすることは医療者、家族にとって難しい。このため、高齢患者は特に医薬品の適正使用を行う上で課題が大きい。患者が医薬品の安全性を理解し、服薬アドヒアランスを高め、リスクを回避するといった行動変容につながるのかという観点から研究を実施した。 本研究では、医薬品のリスクのうち、高齢者に多い事故として転倒や自動車運転への影響に着目し、どのようなリスクコミュニケーションが実施されているのか、まずpubmedや医中誌などのデータベースをもとに国内外の先行研究調査を実施した。医療従事者の口頭での情報提供,音声言語と共にPatient information leafletなどの紙媒体、文字情報での注意喚起、アイコンなど絵文字情報による注意喚起など多様な媒体による注意喚起が検討されていることが明らかとなった。 医療従事者への聞き取り調査、アンケート調査からは服薬アドヒアランスの低下を考慮し、一部で説明の徹底がなされていない現状が明らかとなった。また、患者へのアンケート調査では、医療従事者からの説明を受けていないとの回答や受けた場合にもリスクの認知が十分でない現状が明らかとなった。調査結果は学会報告や研究論文としてまとめ、国際査読雑誌に公表された。研究成果は今後の医薬品のリスクコミュニケーションの在り方について実践的に考えるため、シンポジウムやワークショップを行い、生かしていく。
|