研究課題
我が国における診療ガイドライン作成において、利益・不利益バランスを検討するための標準的方法を確立することを目的とし、以下の検討を行う。1)がん検診におけるMultiple Criteria Decision Analysis(MCDA)の応用に関する文献的検討、2)診療ガイドラインにおける利益・不利益バランスの評価方法の比較検討、3)我が国の診療ガイドライン作成に応用可能な利益と不利益のバランスの評価方法の開発、4)MCDAによる推奨グレード決定プロセスの確立。さらに、これらの結果に基づき、診療ガイドライン作成における利益・不利益バランスの判断基準設定のために政策提言を行う。平成29~30年度は、以下の検討を行った。1.がん検診の選好について、多元的判断分析(Multiple Criteria Decision Analysis, MCDA)の事例に関する文献的検討を行った。定型的ながん検診の選好嗜好に関する評価には、従来は仮想評価法(contingent valuation)やconjoint analysisが用いられることが多かったが(Phillips KA, et al. 2006)、近年ではMCDAの応用も見られ、なかでもAnalytic Hierarchy Process(AHP)が主に用いられていた。2.子宮頸がん検診を例にAnalytic Hierarchy Process(AHP)による調査を行うための準備として、GRADEの推奨決定要因である利益(有効性)、利益不利益バランス、医療資源、患者価値観の4点についてシステマティック・レビューを行った。この結果に基づき、細胞診、HPV検査、HPV検査と細胞診併用による子宮頸がん検診の推奨グレード決定に向けて、個々の科学的根拠を相対的に評価するためのAHPによる調査票を作成した。
3: やや遅れている
1.子宮頸がん検診に関する科学的根拠診療ガイドライン作成に用いられる国際的基準であるGRADEでは推奨決定に利益(有効性)、利益不利益バランス、医療資源、患者価値観の4点を軸に推奨グレードを決定する。細胞診、HPV検査、HPV検査と細胞診併用による子宮頸がん検診について、以下のシステマティックレビューを行った。①「利益(浸潤がん罹患率減少効果)」細胞診に対する相対リスクはHPV検査単独法では0.86 (95%CI: 0.38-2.00)、細胞診・HPV検査併用法は0.57 (95%CI: 0.27-1.11)であった。②「利益と不利益のバランス」1万人の女性が子宮頸がん検診を受診した場合、いずれの方法も浸潤がんの発症は1人程度に抑制できる。一方、細胞診に比べてHPV検査を含む方法では、要精検者数、CIN3以上の病変で治療対象者数が増加する。細胞診とHPV検査併用法では、細胞診の約3倍の要精検者数、CIN3以上の病変で治療対象者数となる。いずれの方法も、過剰診断の可能性を除外した真の治療対象者数に大差はなく、浸潤がん発症は1人程度である。③「医療資源」産婦人科医の勤務する医療機関には地域格差があり、産婦人科医のいない地域では検診アクセスが低下していた。検診に限らず、その後の診断、治療においても産婦人科や婦人科専門医の不足していた。④「価値観」HPV検査自己採取に関する3件のメタ・アナリシスでは、受診率は1.2倍から2.4倍まで増加していた。2.子宮頸がん検診における多元的判断分析(Multiple Criteria Decision Analysis, MCDA)の調査票作成細胞診、HPV検査、HPV検査と細胞診併用による子宮頸がん検診の推奨グレード決定に向けて、MCDA 法の中のAnalytic Hierarchy Process(AHP)による調査票を作成した。
我が国における診療ガイドライン作成において、利益・不利益バランスを検討するための標準的方法を確立することを目的とし、以下の検討を行う。1)がん検診におけるMultiple Criteria Decision Analysis(MCDA)の応用に関する文献的検討、2)診療ガイドラインにおける利益・不利益バランスの評価方法の比較検討、3)我が国の診療ガイドライン作成に応用可能な利益と不利益のバランスの評価方法の開発、4)MCDAによる推奨グレード決定プロセスの確立。さらに、これらの結果に基づき、診療ガイドライン作成における利益・不利益バランスの判断基準設定のために政策提言を行う。【令和元年度】平成30年度は、細胞診、HPV検査、HPV検査と細胞診併用による子宮頸がん検診の推奨グレード決定に向けて、GRADEの視点である利益(有効性)、利益不利益バランス、医療資源、患者価値観の4点に基づき、Analytic Hierarchy Process(AHP)による調査票を作成した。令和元年度は、この調査票を用いて,子宮頸がん検診の各方法について推奨グレードを決定するための調査を行う。AHPによる調査結果と合議による子宮頸がん検診ガイドラインの推奨グレードの対比を行う。また、諸外国で作成された子宮頸がん検診ガイドラインにおける推奨グレードとの比較も行い、MCDAによる診療ガイドラインの推奨グレード決定プロセスの利点・決定を明らかにする。これらの結果に基づき、利益・不利益バランスを計量的に判断する方法として、診療ガイドライン作成におけるMCDAの応用した推奨グレード決定プロセスを明確化し、透明性の高いガイドライン作成方法を確立する。
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