研究課題
本研究は、心血管疾患の一次予防としての脂質低下療法について、費用対効果の観点から検討するものである。初年度である平成29年度は、脂質低下療法の心血管疾患の発症予防について日本人のエビデンスを系統的に収集し、費用対効果モデルに用いる効果指標を検討することを目的とした。本研究では、スタチンだけでなく、エゼチミブなどの非スタチンも含めたLDL-C低下薬について検討することとした。検索期間は、1990年から2016 年とし、対象者の年齢は35歳以上とした。検索に用いるデータベースは、PubMed、医中誌およびCochrane Reviewとした。日本人を対象としてランダム化比較試験は非常に少ないため、観察研究も含めることとした。また、各種ガイドラインや脂質低下薬に関するレビューも参考にし、情報を収集した。収集した論文について質の評価を行った上で、モデルに用いる効果指標を決定した。加えて、費用対効果分析に用いるモデルについての検討を行った。分析に用いるモデルは、Cardiovascular Disease Policy Modelを参考に作成した。次年度は、モデルに必要なデータ(心血管疾患の発症率、死亡率、心血管疾患のリスク因子)を収集する予定である。モデルに用いるデータは、公開されている公的な統計情報やコホート研究、レセプトデータなどを用いることとし、収集した情報を用いて、本年度作成したモデルが臨床的に妥当かどうか、日本の疫学データを用いて検証する予定である。
2: おおむね順調に進展している
平成29年度は、脂質低下療法による心血管疾患の一次予防についてのエビデンスを系統的に収集し、分析に用いる効果指標を決定した。また、分析に用いるモデルの構築を行った。3年間の研究期間で、初年度が終了した段階であるが、計画通りに進んでいる。
次年度は計画に従って、今年度構築を行ったモデルについて、臨床的に妥当かどうかのシミュレーションを行う予定である。また、大規模レセプトデータの解析し、脂質低下療法と心血管疾患の診断・治療費の推計を行うとともに、心血管疾患患者のQOLデータより効用値の推定を行うこととしている。
次年度は、費用対効果分析に用いる情報について、リアルワールドデータを収集するための費用が必要となる。加えて、収集したデータをデータベース化するための費用が必要となる。これらの経費に、初年度の予算の一部を使用する予定である。
すべて 2017
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件)
Prim Care Diabetes
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