研究実績の概要 |
細胞膜透過性ペプチド(CPP: Cell Penetrating Peptide)は、目的の導入物質と結合させたものを細胞の培養液へ加えるのみで細胞内へと導入させることができる。しかし、エンドサイトーシスにより取り込まれることから、導入された物質はエンドソーム内で多くは変性・分解されてしまうという問題があった。申請者は、CPPに疎水性配列を付加することで緑色蛍光タンパク質EGFPや抗体などの生理活性分子を、サイトゾルへと導入することができる“サイトゾル移行型CPP (Pas2r12)”を見出した。今年度は、マウスにおける臓器指向生の解析を行った。生後11週のマウス(C57BL/6NCrl, メス)の腹腔内に、EGFPのみ(control)あるいはPas2r12/EGFPの複合体を投与した。投与 2 時間後あるいは 24 時間後に、尾静脈からの採血および臓器摘出を行なった。各臓器に組織溶解液を加え、物理的に粉砕して遠心分離を行い、上清を臓器抽出液とした。血液および臓器抽出液にサンプル調製液を加えて熱処理を行い、SDS-PAGE後にウェスタンブロッティングを行った。Pas2r12とEGFPの複合体をマウス腹腔内に投与したところ、投与後 2 時間ではcontrol と Pas2r12/EGFP 共に各臓器に EGFP が検出された。しかし、投与後 24 時間ではcontrol と Pas2r12/EGFP共にEGFPはほとんど検出されなかった。一方、血液中の EGFP は投与後 2 時間では検出されたが、24 時間ではほとんど検出されなかった。これらの結果から、投与 2 時間後でcontrol と Pas2r12/EGFP 共に各臓器に EGFP が検出されたのは、臓器に含まれる血液や間質液等にEGFPが存在した為ではないかと考えられた。
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