研究課題/領域番号 |
17K08948
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研究機関 | 浜松医科大学 |
研究代表者 |
小田切 圭一 浜松医科大学, 医学部附属病院, 特任准教授 (70529213)
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研究分担者 |
田中 紫茉子 静岡県立大学, 薬学部, 助教 (10559925)
神谷 千明 浜松医科大学, 医学部附属病院, 医員 (30792692)
渡邉 裕司 浜松医科大学, 医学部, 教授 (50262803)
袴田 晃央 浜松医科大学, 医学部, 助教 (60788280) [辞退]
内田 信也 静岡県立大学, 薬学部, 准教授 (80372522)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 液体クロマトグラフィー質量分析法 / HPLC / 肺高血圧症 / 薬物濃度 |
研究実績の概要 |
今年度はLC-MS/MSを用いたセレキシパグselおよびMRE-269(MRE)の血中濃度高感度測定系を確立した。測定方法は血漿microLに内標準物質としてhomo-sildenafil(10ng)を添加し、0.1% formic acid 1000microLを加えて混和した後、10000rpmで5分間遠心分離し、上清を固相抽出し、100microL のacetonitrileで再構築した。抽出液5microLをLC-MS/MSで測定した。移動相には5 mMammonium acetate及びacetonitrileを用い(6:4)、流速は0.4mL/minとした。分析カラムはZORBAX RRHD(2.1×50mm; i.d., 1.8microm, Agilent Technologies, U.S.A.)を用いた。Sel、MRE及びhomo-SilはESI法により陽イオン化し、m/zをそれぞれ497.1/302.0 420.2/302.15及び489.6/113.2とした。この条件下でLC-MS/MSを用いてSelおよびMREが検出可能か検討したところ、それぞれの保持時間は1.17及び1.35分であり、血漿中濃度の検量線はいずれも0.1-50ng/mLの範囲で良好な直線性(r2>0.97)を示した。また本定量法における真度と精度は許容できる範囲内であった。 計画した臨床研究において研究対象者の登録がないため、本課題の研究代表者である小田切が研究分担者となっている「肺高血圧症治療薬の治療的薬物濃度モニタリングの確立」および「シトクロムP450基質薬セレキシパグ投与におけるクロピドグレルによる薬物相互作用の評価」で得られたサンプルの測定において、本研究課題で確立したLC-MS/MSを用いた血中濃度の測定を行い得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
H29年の報告書に記載したように、当初設定したマイルストーンである肺高血圧患者を対象にした薬力学的データと薬物濃度の関連性の検討については、臨床研究にエントリーがなく比較ができなかった。一例、本学で実施中で「肺高血圧症治療薬の治療的薬物濃度モニタリングの確立」において、セレキシパグ投与前後でカテーテル検査を行っている研究対象者がおり、血中濃度と薬力学的な比較をなし得たが、十分な血中濃度が得らえていたにもかかわらず、薬力学的な効果は不十分であった。これについては今後症例を重ねるとともに考察を加えていく。 一方では、本学で実施中の臨床試験「シトクロムP450基質薬セレキシパグ投与におけるクロピドグレルによる薬物相互作用の評価」(UMIN000032266)において、本研究課題でH30年度に確立されたLC-MS/MSを用いた高感度測定系を用いて、14名294サンプルのセレキシパグおよびMRE-269の血中濃度を精度高く測定することができた。研究脱落者1名を除く13名の解析結果から、クロピドグレルを前日まで服用した研究対象者6名においてクロピドグレル服用前と比較し、服用後にではセレキシパグ及びMRE-269のCmaxは1.0倍及び1.2倍、AUC0-∞は1.1倍及び1.2倍となった。一方、クロピドグレルを試験当日まで服用のした研究対処医者者7名においてはクロピドグレル服用前と比較し、服用後においてセレキシパグ及びMRE-269のCmaxは0.9倍及び1.0倍、AUC0-∞は0.9倍及び2.1倍となった。本研究課題で開発された、セレキシパグおよびMRE269の血中濃度測定系を応用し、セレキシパグとクロピドグレルの薬物相互作用を明らかにすることができた。
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今後の研究の推進方策 |
すでに、本研究課題開始時に設定したLC-MSを用いたセレキシパグ及びMRE-269の血中濃度の測定については初年度に確立され、昨年度の実施状況報告時に見直しを行ったマイルストーンであるLC-MS/MSを用いた高感度血中濃度測定系についても確立することができた。本学で実施中の臨床研究「肺高血圧症治療薬の治療的薬物濃度モニタリングの確立」において取得した検体を用いて、実際の患者における血中濃度測定も反復して行うことができ、測定系のバリデーションも確認し得た。さらに薬物相互作用を検討する研究課題においても本手法を応用することが可能になった。 来年度は「肺高血圧症治療薬の治療的薬物濃度モニタリングの確立」において取得されたサンプルをもちいて、実際に臨床現場で服薬されている患者におけるセレキシパグおよびMRE-269の血中濃度の測定を行っていく。測定サンプル数を重ねていき、当該研究の計画に従い母集団薬物動態解析を行う予定である。これらにより、実臨床における投与量と薬物濃度の関連性が明らかになり、今後の薬物投与計画などにおける重要な知見が得られることが期待される。 また、「シトクロムP450基質薬セレキシパグ投与におけるクロピドグレルによる薬物相互作用の評価」については、すでにサンプルの測定が終了し、薬物相互作用を評価し得た。この結果から得られた知見は、今後のセレキシパグを用いた肺高血圧症患者の治療の行ける重要な情報となりうるものである。この結果については、次年度以降に学会などで発表の後に、論文として公表する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
H29年度に実施したLC-MSを用いたセレキシパグとMRE-269のけっちゅう濃度測定系の樹立がスムーズに行わた結果、H29年度からH30年度への繰越金に余裕があった。またH30年度に実施したLC-MS/MSを用いた高感度測定系の確立においても、当初想定よりもスムーズ研究進んだため、試料抽出試薬や測定用のカラムなど消耗品の購入が少なく済んだ。そのためH30年度の当初の予算見積もりよりも少ない経費で実施が可能であった。繰り越し分のH31年度使用額については、引き続き臨床研究で得られるサンプルの測定を行うための消耗品(血液試料抽出試薬(アセトニトリル他)血液試料分析機用消耗品(分離カラム、プレカラム、フィルター))の購入費用、ならびに今年度の臨床研究で得られた結果を学会発表、論文で公表するための経費などに用いる予定である。
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