研究課題/領域番号 |
17K08949
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研究機関 | 浜松医科大学 |
研究代表者 |
渡邉 裕司 浜松医科大学, 医学部, 理事 (50262803)
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研究分担者 |
三坂 眞元 福島県立医科大学, 医学部, 講師 (10583635)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 臨床薬理学 |
研究実績の概要 |
パラオキソナーゼ(PON) 3は有機リン化合物を加水分解するエステラーゼであり、スタチナーゼとも呼ばれ、シンバスタチンやスピロノラクトンなどラクトン構造を持つ薬物の加水分解を担う酵素である。近年、PON3の抗動脈硬化作用や抗肥満作用が注目されているが、我々は欧米人に比し日本人でPON3活性が高い可能性を見出しており、動脈硬化発症の民族差の要因の一つとなる可能性も示唆される。PON3には遺伝子多型が存在するが、日本人におけるアレル頻度およびPON3の基質となるラクトン構造を有する薬物の薬物動態との関連は明らかではない。本研究では、日本人におけるPON3遺伝子多型のアレル頻度を明らかにし、臨床薬理学的にその基質となるラクトン構造を有する薬物の血中濃度とPON3遺伝子多型との関連を解析することを目的とした研究課題「パラオキソナーゼ3(PON3)に関する日本人の基盤データの構築」に関する臨床研究を開始し、健常人のサンプルにおいてPON3遺伝子多型解析の検討を進めている。またPON3濃度の評価法をほぼ樹立した。PON3は抗動脈硬化作用や肥満との関連も指摘されており、PON3に個体間差が認められた場合、PON3と動脈硬化性疾患罹患との関連などPON3に関する研究の進展に大きく貢献することが期待される。これまでに血清HDL-コレステロール濃度とPON3濃度は有意に相関することが明らかとなり、さらに日本人血清中PON3濃度は10.6±3.7 μg/mL (n=33) であり、5倍程度の個人間変動が認められた。一方、血清中PON3濃度とタンパク濃度に相関は見られなかった。白人での既報の血清中PON3濃度と比較すると日本人で数倍以上PON3濃度が高値であり、人種差が存在することが示唆された。本研究成果は薬物分解酵素であり抗動脈硬化因子とも考えられるPON3に関する日本人の基盤データを構築する独創性の高い研究と考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
PON3は抗動脈硬化作用や肥満との関連も指摘されており、PON3に民族差や個体間差が認められた場合、PON3と動脈硬化性疾患罹患との関連などPON3に関する研究の進展に大きく貢献することが期待される。PON3活性に関するシンバスタチンラクトンおよびカンレノンの加水分解実験では、ヒト血清におけるシンバスタチンおよびカンレノンのCa依存性の加水分解が観察され、シンバスタチンとカンレノンの血清中加水分解能が相関する可能性が示唆された。またPON3濃度の評価法をほぼ樹立した。これまでに血清HDL-コレステロール濃度とPON3濃度は有意に相関することが明らかとなり、さらに日本人血清中PON3濃度は10.6±3.7 μg/mL (n=33) であり、5倍程度の個人間変動が認められた。一方、血清中PON3濃度とタンパク濃度に相関は見られなかった。白人では血清中PON3濃度は 1.78 μg/mL(中央値)との報告があり (Aragonès G. et al., J Lipid Res, 2011) 、日本人は白人に比してPON3濃度が高値であり、人種差が存在することが示唆された。しかしながら、コロナウイルス感染症の影響により、予定した分担研究者との研究が延期(時期未定)となったため、進捗状況にわずかな遅れが生じている。
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今後の研究の推進方策 |
浜松医科大学倫理委員会で承認を受けた「パラオキソナーゼ3(PON3)に関する日本人の基盤データの構築」に関する臨床薬理学的研究を継続する。また日本人におけるPON3活性と遺伝子多型の関連解析を進めるとともに、研究分担者との研究をコロナウイルス感染症収束後に速やかに再開する。
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次年度使用額が生じた理由 |
令和2年3月に予定していた分担研究者との研究がコロナウィルス感染症の影響により延期(時期未定)となったため。コロナウィルス感染症収束後に速やかに再開する。
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