研究課題
オキサリプラチンなどの抗がん薬は、高頻度で末梢神経障害を引き起こし、重篤例ではがん治療の継続が出来ず、臨床現場で切実な問題となっている。しかし、その発現機序は明確になっておらず、有効な対応策は確立されていない。本研究は、がん化学療法における痛みと睡眠との関係を解明し、新たな予防・治療法の確立を目指すものである。これまで、ラットに抗がん薬であるオキサリプラチンを連続投与して末梢神経障害動物モデルを作製し、末梢神経障害と睡眠リズムや脳波などとの関連性について検討を行った。しかし、明確な関係を見出すことはできなかった。一方、オキサリプラチン誘発末梢神経障害動物モデルでは、脊髄でのグルタミン酸濃度が著明に上昇し、その取込のトランスポーターであるGLT-1の発現が末梢神経障害発現時に有意に低下することを明らかにした。また、末梢神経障害動物モデルを用いて、末梢神経障害に有効な薬剤の探索を行ったところ、イブジラスト、加味逍遥散、リルゾール、テアニンなどの薬剤が坐骨神経の軸索変性を抑制して機械的アロディニアを予防することを見出した。さらに、イブジラストや加味逍遥散は、NGFを添加したPC12細胞において、オキサリプラチンおよびパクリタキセルによる神経突起退縮に対して神経突起を伸展した。そして、その作用にはcAMPの増加作用が寄与していることを明らかにした。また、イブジラスト、加味逍遥散、リルゾールなどは、オキサリプラチンの抗腫瘍作用に影響しないことを、がん細胞や担がん動物を用いた検討で確認した。以上の研究成果より、すでに医療用医薬品として使用されている薬剤の中から、イブジラストや加味逍遥散などの医薬品が抗がん薬誘発末梢神経障害に対して有用である可能性を見出した。
すべて 2021
すべて 雑誌論文 (9件) (うち査読あり 9件、 オープンアクセス 9件) 学会発表 (1件)
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