研究課題/領域番号 |
17K08955
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
石塚 洋一 熊本大学, 大学院生命科学研究部(薬), 准教授 (70423655)
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研究分担者 |
江良 択実 熊本大学, 発生医学研究所, 教授 (00273706)
竹尾 透 熊本大学, 生命資源研究・支援センター, 講師 (10517014)
中潟 直己 熊本大学, 生命資源研究・支援センター, 教授 (30159058)
永松 朝文 熊本大学, 薬学部, 客員教授 (40155966)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | アセトアミノフェン / 肝障害 / ミトコンドリア / ドラッグデリバリーシステム |
研究実績の概要 |
古くから世界中で汎用されている解熱鎮痛薬アセトアミノフェンは、アスピリンなどの非ステロイド性抗炎症薬と比較して胃腸障害やライ症候群発症など副作用の発現頻度は低く安全性の高い薬と認識されている半面、小児の誤飲や自殺企図などで過量服用された際にほぼ確実に肝傷害を誘発する。これまで、世界中でアセトアミノフェン誘発肝傷害に関する研究が行われてきたが、アメリカ食品医薬品局FDA公表の最新データ等で、移植が必要な急性肝不全の大多数はアセトアミノフェンが原因と報告され、欧米で重大な社会問題となっている。したがって、アセトアミノフェン誘発肝障害の病態メカニズム解明と画期的な新規治療薬の開発が急務である。本研究では、アセトアミノフェン誘発肝障害に対するミトコンドリア標的療法の可能性を検証する。 平成29年度は、アセトアミノフェン誘発肝障害モデルマウスに対しミトコンドリア指向性抗酸化剤Mito-TEMPOを投与し、肝障害抑制効果について調べた。その結果、Mito-TEMPOは各種肝障害パラメーター(血清ALT値、肝臓病理解析)を改善した。また、アセトアミノフェン投与で見られた肝ミトコンドリアの過剰な活性酸素種産生をMito-TEMPOは顕著に抑制した。一方で、アセトアミノフェン誘発肝障害の病態形成に重要な役割を果たす c-jun N-terminal kinase活性化や小胞体ストレス関連細胞死誘導因子CCAAT-enhancer-binding protein homologous proteinの発現亢進は、Mito-TEMPO投与は影響を与えなかった。また、ミトコンドリア高指向性を示す各種抗酸化剤の有効性比較を行い治療薬候補物質の選定を行った。更に、四塩化炭素誘発肝障害やコンカナバリンA誘発肝障害モデルを用いてMito-TEMPOの肝保護を調べた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
平成29年度はMito-TEMPOを始めとするミトコンドリア指向性抗酸化剤の有効性評価を予定通り終えることが出来た。さらに予定を繰り上げて、四塩化炭素誘発肝障害やコンカナバリンA誘発肝障害などの他の肝障害モデルを持ちいた検討も行った。以上のことから、当初の計画以上に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度までの知見に基づいて、予定を繰り上げて、臨床への橋渡しを考慮に入れた治療薬としての可能性評価(Therapeutic time windowの検討)を行う。また、申請者らが確立したアセトアミノフェン肝障害ヒト型in vitro評価系を用いたミトコンドリア指向性抗酸化剤の有効性評価を行う。
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