研究実績の概要 |
申請者らの研究グループはこれまでに最初に見出された腫瘍型L型アミノ酸トランスポーターLAT11)を対象とした創薬研究を進めてきた。特にLAT1の特異的阻害薬であるJPH203 (KYT0353)の抗腫瘍作用に関しては多角的な面からの検討を行ってきた。しかしもう一つの腫瘍型トランスポーターLAT3に関する検討は殆ど行われていない。腫瘍型中性アミノ酸トランスポーターLAT3はヒト由来がん細胞株の中でLAT1と組織発現部位が異なることに加え、その基質認識性も異なり、アミノ酸類似構造を持つL-leucinol, L-valinol, L-phenylalaninolなどはLAT3でより輸送されることが知られていた。そこで申請者は本研究の分担者である宇都宮大学工学部の大庭とともに、この腫瘍型LAT3に対する阻害薬の探索を開始した。その結果予備実験として行った29種類のアミノ酸誘導体のスクリーニングを行った結果、2つの阻害効果の強い化合物を見出すに至った(Jutabha, 安西, 大庭ら、第135回日本薬理学会関東部会にて発表)。そこで申請者らはLAT1とは異なる特性を持つ腫瘍特異的アミノ酸トランスポーターLAT3による必須アミノ酸輸送を阻害する候補化合物の構造活性情報を基に、LAT3に対する阻害薬を創製することで、新たながん根治療法開発を目的とする本研究を着想した。新規LAT3阻害候補化合物群の設計と合成を行い、アフリカツメガエル卵母細胞発現系を用いた構造活性相関の検討を繰り返すことで、LAT1とは異なり、LAT3およびその類縁アイソフォームであるLAT4特異性を示す化学構造の同定にほぼ成功した。得られた成果を2017年11月20日(月)~11月22日(水)に大阪にて開催された第54回ペプチド討論会にて大庭が発表を行った。
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