研究課題
本研究課題は、代謝酵素の遺伝子変異、腎機能、血中タンパク濃度などの各薬物に固有の薬物動態(Pharmacokinetics:PK)規定因子を指標として用量調節を行い、個々の患者の薬物曝露量を有効性と安全性が担保されている曝露量に一致させること(exposure matching)による個別化投薬の確立を目指している。したがって研究対象の6薬剤について、①曝露量-反応関係の有無および程度の検討、②PK規定因子の探索と確定、③個別化投薬アルゴリズムの構築、といった3つのステップにより検討を進めており、患者のPKデータならびにPK規定因子候補も含めた臨床情報を収集することを基本としている。以下に平成30年度の研究実績を記す。(1)CYP2C19の遺伝子型に基づくボリコナゾール併用時のタクロリムス:既に終了した観察研究のデータを解析し、アルゴリズムの構築に向けた検討がほぼ終了し、論文化の準備を進めている。(2)S-1:30例での臨床試験が終了し、UPLC-MS/MS法にて測定した血中5-FU濃度と患者の背景因子に基づく母集団解析結果により式を一部補正し、腎機能と体表面積に基づく用量算出式が完成した。結果は2019年1月に米国で開催されたASCO-GI Symposiumで発表した。(3)68症例のデータを用いて毒性に関して、血中レゴラフェニブ濃度およびレゴラフェニブと活性代謝物M2とM5の濃度和との曝露量-反応関係について解析を行った。結果は昨年10月にドイツで開催されたESMO Congressで発表した(4)アルブミン懸濁型パクリタキセル:①と②の検討を行うための臨床試験を実施中。(5)トラスツズマブ:②の検討のための臨床試験の症例登録が終了した。(6)ラムシルマブ:②の検討のための臨床試験の症例登録が終了した。
2: おおむね順調に進展している
臨床試験はアルブミン懸濁型パクリタキセルの試験以外は症例登録を終了した。なおアルブミン懸濁型パクリタキセルの試験も今秋には終了予定である。
研究計画を変更する必要はなく、当初の計画通りに進めて行く。
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