本研究テーマであるうつ病の主な病因の一つに神経のシナプス伝達障害が挙げられることから、神経伝達物質貯蔵小胞の細胞内輸送機構の詳細を解明することはとても重要であり、この過程に密接に関与するRabタンパク質の制御機構解明は、既存の抗うつ薬とは異なる新たな薬物標的となり得ることが期待できるため、このRabタンパク質に関わる活性調節経路の重要性を明らかにすることを目的として昨年度より引き続き本研究を行った。 本研究においてとても重要であると位置づけている五つのタンパク質Rab/GTRAP3-18/CK2/Hsp90/HDAC6のうちの一つGTRAP3-18を細胞内に強制発現させると認められる強い毒性をRabファミリータンパク質の一つRab1aが緩和することに成功したことから、残りの三つのタンパク質CK2/Hsp90/HDAC6に着目し、それぞれのタンパク質強制発現系を構築させ、それぞれのタンパク質の機能を調べていくために、これまでGTRAP3-18とRabの2種類のタンパク質の発現ベクターしか作製に成功していないので、残りのCK2/Hsp90/HDAC6三つのタンパク質の発現ベクターの構築を遂行した。また、GTRAP3-18を細胞内に強制発現させると認められる強い毒性を何とか抑える術が他にないかと試行錯誤を行ってきた結果、蛍光タンパク質GFPを結合させたキメラタンパク質GFP-GTRAP3-18としてなら、GTRAP3-18の毒性を緩和できることを見い出せたので、CK2/Hsp90/HDAC6三つのタンパク質の発現ベクターの構築の際にも同様のキメラタンパク質発現ベクターの構築も同時に遂行した。現在までにCK2とHDAC6の発現ベクターの構築に成功し、これら発現ベクターの細胞内導入条件の検討を行っている。
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