研究課題
[目的] 近年、ゲノムワイド遺伝子多型解析等によりニコチン等の物質依存脆弱性や重症度個人差の遺伝要因が明らかにされつつあるが、欧米人と比較して日本人サンプルにおける喫煙行動の遺伝要因の研究は大きな進展を遂げていない。本研究では、代表研究者らの所属研究室においてこれまで収集された日本人サンプルに対してゲノムワイドコピー数変異・多型関連解析を行い、ニコチン等の物質依存脆弱性や重症度と関連する遺伝子多型を網羅的に探索する。[方法] 喫煙情報の付随するがん・糖尿病・高血圧患者240名を対象とした。合計約50万以上のマーカー遺伝子多型を解析するアレイHumanCoreExome及びiScan Systemを用いたInfinium assay法によるマーカーの判定後、コピー数変異・多型解析用ソフトウェアによりコピー数変異・多型を検出し、上記サンプルの解析を行う。得られたデータを、現有の統計解析用ソフトウェアを用いて統計学的に解析し、ニコチン依存脆弱性・重症度とコピー数変異・多型との関連を見出す。[結果] 対象症例において、0~22番常染色体及びX染色体上に合計1,413のCNV領域が検出された。一日本数(CPD)、Fagerstroem Test for Nicotine Dependence (FTND) score、Tobacco Dependence Screener (TDS) score、の表現型に対してこれらのCNVとの関連解析を行ったところ、いずれの表現型においても、全ゲノム補正後p値に対してもp < 0.05となるようなCNVは認められなかった。[結論] 充分な統計学的検出力を以て日本人においてニコチン依存重症度に関連する有力候補CNVを同定するためにも、別途追加検体を用いて今後検討を行う必要があると考えられる。
2: おおむね順調に進展している
当該年度の研究において、解析はほぼ予定通り進行し、追加症例を用いてニコチン依存重症度とCNVとの網羅的な関連解析が遂行されたため。
今後は、当該年度までの研究において行っていた解析と同様の解析を引き続き行う。すなわち、当該年度には解析対象としていない、喫煙情報の付随するがん・糖尿病・高血圧患者のサンプルに関する独立した全ゲノムジェノタイピングデータを用い、ニコチン等の物質依存脆弱性や重症度に関連するCNVを同定する。さらに、比較的頻度の高いCNVに対しては、commonな一塩基多型などの場合と同様に、物質依存脆弱性や重症度の指標となる臨床データを用いて関連解析を行う。これらの解析において有意な関連が見出されたCNVに関しては、文献検索及びリアルタイム定量PCR(qPCR)による追加解析等を含めた詳細な検討を行い、最有力候補構造多型・変異(最もcausativeと考えられるCNV及びその遺伝子)を同定する。
(理由)基本的には当初の研究期間内に全額を使用すべく計画的に執行したが、年度末近くになっても実験が引き続いており、本年度達成できなかった実験及び解析を次年度に行うこととなった。(使用計画)物品費(実験用試薬及びプラスチック製品等)、旅費(研究成果発表目的の国内外旅費及び研究打合せ目的の出張費等)、その他(論文校閲費・投稿料・別刷費等研究成果発表費用)に対して使用予定である。
すべて 2019 2018 その他
すべて 雑誌論文 (7件) (うち査読あり 6件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (14件) (うち国際学会 8件、 招待講演 4件) 備考 (1件)
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