研究課題/領域番号 |
17K08971
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研究機関 | 旭川医科大学 |
研究代表者 |
藤井 聡 旭川医科大学, 医学部, 教授 (90291228)
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研究分担者 |
赤坂 和美 旭川医科大学, 医学部, 講師 (80344555)
生田 克哉 旭川医科大学, 医学部, 講師 (00396376)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 臨床検査医学 / NAFLD / 動脈硬化症 / 鉄代謝 / バイオマーカー |
研究実績の概要 |
一般住民における潜在性心筋傷害と心電図上見られる左室肥大所見との関連を検討した。心電図に見られる左室肥大所見は心筋障害マーカーとしての血中心筋トロポニン濃度の変化と関連することを明らかとした。また、中心血圧および上腕血圧は血中心筋トロポニン濃度に相関した。以上から血中心筋トロポニン濃度は総合的に潜在性の心筋傷害のマーカーとして使用できる可能性を明らかとした。また、自己血貯血患者で血中マイクロRNA122レベル とヘモグロビン濃度など血液学的指標との関係を検討した。マイクロRNA122レベルは貯血による血中ヘモグロビン濃度の変化とある程度の関連がみられた。また、マイクロRNA488の血中レベルは酸化ストレスを反映し、冠動脈の機能異常や動脈硬化症のバイオマーカーとなる可能性を検討した。これらの因子の基礎データは、本研究において微小心筋傷害マーカーとして血中トロポニン濃度の測定が有用であり、非トランスフェリン結合鉄non-transferrin-bound iron (NTBI)との関係について、臨床検査医学的応用を検討する妥当性を裏付けるものと考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
鉄代謝異常関連因子として血液中のトランスフェリンに結合しないフリーな非トランスフェリン結合鉄NTBIの臨床検査機器を用いた測定の妥当性の検討を進めている。NTBIは生体に有害となる鉄の存在形式と考えられ、NTBIの測定は臨床的に鉄が生体におよぼす影響をとらえるうえで重要であるという仮説をさらに検証している。分担研究者らはすでに安定かつ高感度にNTBIを測定する方法を確立し、より正確な健常人のNTBI値を算出することに成功してきている。肝疾患や循環器疾患を有する患者において健常人と同様に、安定かつ高感度にNTBIを測定しうるかを、検討を重ねてきている。また、臨床検査室に実装しうる検査機器を用いて実用的に供しうるスピードでリアルタイムな鉄動態を反映して測定可能かも検討している。
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今後の研究の推進方策 |
肝疾患や循環器疾患の患者において体内の鉄動態を把握する新しい指標としての血清NTBI値の可能性についてこれまでに報告された病態とNTBIとの関係も含めて研究をすすめる。肝線維化の指標となるMac-2 binding protein糖鎖修飾異性体や非アルコール性脂肪性肝疾患(non-alcoholic fatty liver disease, NAFLD)や非アルコール性脂肪肝炎(nonalcoholic steatohepatitis, NASH)と関連が深い肝臓の線維化を予測できるFib4 indexとNTBIとの関係を検討する。また、鉄代謝異常関連因子としてのNTBIと代謝症候群との関係を検討する。具体的にはNTBIと代謝症候群との関係はメタボリックシンドロームの患者で検討する。鉄代謝異常関連因子としてのNTBIと微小心筋傷害との関連は血中心筋トロポニン濃度の測定およびNTBIと心機能との関連は血中BNP濃度の測定により検討する。以上により鉄代謝異常と心疾患、肝疾患との関係を総合的に明らかとする。過去に心血管イベントの既往、心電図でST-T異常、頻発性不整脈のない対象で、心筋障害の指標として血中心筋トロポニン濃度、心機能の指標として血中BNP濃度を測定し、メタボリックシンドロームとその構成因子との関連性を検討する。メタボリックシンドロームの有無による血中トロポニン濃度、血中BNP濃度は両群間で差を認めるか解析する。腹囲、血圧、脂質、糖代謝いずれかの異常を呈する対象は各々の異常を呈さない対象に比べ血中トロポニン濃度や血中BNP濃度が高いかを評価する。もし差があれば、腹囲を中心として、腹囲と他の1構成因子のみの異常を呈する非メタボリックシンドロームでの血中トロポニン濃度やBNP濃度は、メタボシックシンドロームでみられるレベルより低いかをさらに解析する。
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次年度使用額が生じた理由 |
鉄代謝異常関連因子としてNTBIの臨床検査室に実装された機器を用いた測定系の至適条件の調整と妥当性の検討に時間を必要とした。そのため、鉄代謝異常関連因子としてのNTBIと代謝症候群との関係の検討及び鉄代謝異常関連因子としてのNTBIと微小心筋傷害との関連の検討の開始が予定より遅れてしまった。今後、8に示すように研究を加速して鉄代謝異常と心疾患、肝疾患との関係を総合的に明らかとする。
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