研究課題/領域番号 |
17K08972
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
多田 寛 東北大学, 医学系研究科, 准教授 (50436127)
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研究分担者 |
石田 孝宣 東北大学, 医学系研究科, 教授 (00292318)
北村 成史 東北大学, 医学系研究科, 講師 (50624912)
宮下 穣 東北大学, 大学病院, 講師 (60710788)
権田 幸祐 東北大学, 医学系研究科, 教授 (80375435)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 蛍光ナノ粒子 / 遅発性再発 / ABCトランスポーター |
研究実績の概要 |
我々は蛍光特性に優れた新規蛍光ナノ粒子を用いて蛍光免疫染色を行い、蛍光画像自動解析ソフトにてバイオマーカー蛋白を高感度定量化するNano-IHC法を開発し報告している(Scientific Reports 2017)。乳癌術前化学療法後に腫瘍が遺残した症例に対してNano-IHCを用いた薬剤耐性に関与するバイオマーカー蛋白の高感度定量化を行い、予後との検討を行い、細胞内からの薬物輸送に関与し、アンスラサイクリン系等の薬物耐性及び癌幹細胞性との関与が報告されているATP結合カセット(ABC)スーパーファミリーの一つであるBCRP (Breast cancer resistance protein /ABC G2)に着目し、2004ー2010年に当院でアンスラサイクリン系薬剤を含む術前化学療法を施行し、浸潤癌の遺残が認められた37症例の手術検体のパラフィン包埋切片に対してNano-IHC法でBCRPの定量化を行い、カプランマイヤー法を用いて比較しLog-rank検定で予後解析を行った結果、観察期間中央値は95ヶ月で再発症例が19例(51%)、死亡症例が10例(27%)であった。各症例のNano-IHCによるBCRP蛋白スコアの分布は5.4-36.4であり、ROC曲線を用いてカットオフ値を17と設定した結果、BCRP高値群(スコア17以上)は低値群(スコア17未満)と比較し有意に生存期間が短かった(5年生存率 50.0% vs 96.0%, p<0.05)。以上を2018年4月6日に開催された日本外科学会定期学術集会で報告、プレナリーセッションに選出された。さらに、遅発性再発が多いエストロゲン受容体陽性乳癌に着目し、核外エストロゲン受容体が遅発性再発に関与することを明らかにし論文報告した(Cancers 2019, 11(4), 526; https://doi.org/10.3390/cancers11040526)現在、遅発性再発に関わるバイオマーカー蛋白の追加免疫染色中であり検討中の他、BCRPに関して、対象症例のその後の薬剤の使用状況や観察期間を延長した予後の解析を行い、論文執筆中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2018年4月6日に開催された日本外科学会定期学術集会で報告、プレナリーセッションに選出され 、さらに本研究のサブ解析である核外エストロゲン受容体に関する論文がアクセプトされ(Cancers 2019, 11(4), 526; https://doi.org/10.3390/cancers11040526)、さらに研究本体のBCRPに関する論文も今年度前半には投稿する予定であり、順調に進展していると言える。更にバイオマーカー染色を追加し、解析を進めたいと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
当科の乳癌症例データベースが完成し、追跡データについてはほぼ収集済みである。現在までの薬剤使用状況及び予後追跡を行い、データ解析を早急に行い、早期の2本目の論文アクセプトを目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
昨年度は免疫染色が順調に進み、試薬等への予算が抑えられたため。今年度は遅発性再発に関わるバイオマーカーの追加免疫染色と論文作成費及び学会報告のための旅費に充当する。
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