研究課題
レパトア解析方法及び結果。次世代シークエンサーにより1018もの多様性のあるT細胞/B細胞受容体の網羅的解析が可能となった。我々はmRNAからcDNAライブラリー調製を行い、さらに、PCR法によってライブラリーを、バイアスをかけずに増幅する方法として、これまで使用されてきたmultiplex法で代表される多重プライマーを用いて増幅する方法に比較して、その増幅時のバイアスを減らすアダプターライゲーション法を基本とした、遺伝子特異的非バイアス増幅法を開発した。この方法は、cDNAの5‘に特異的に一本鎖アダプターを結合させて、それをもとにPCR法で増幅するため、PCRプライマーは最小でよく、不要な遺伝子増幅は起こらないため、バイアスをかけずに遺伝子を増幅できる。平成29年度は、この方法を用いてB細胞受容体H鎖の検出を試み、B細胞受容体H鎖PCRプライマー設計を行って非バイアス遺伝子増幅技術を確立した。さらに、次世代シークエンサーでペアエンドシークエンスを行うことで、目的長の遺伝子配列を検出することができた。平成30年度には、実際のヒトから得られたリンパ球分離後の検体を用いて実際にT細胞及びB細胞受容体のレパトア解析を可能とした。患者におけるレパトア検出に関する臨床研究の進捗。上記手法を用いた臨床研究案を作成。具体的には活動性関節リウマチ患者で生物学的製剤での治療を必要とする患者において、治療前、及び治療後で治療反応性を確認すると同時にTCRおよびBCRのレパトア解析をおこない、治療による、実際の変化を確認する臨床研究プロトコールを策定、倫理委員会に提出し、平成30年3月の倫理委員会で承認された。現在上記プロトコールに従い15例の関節リウマチ患者のサンプルを解析、さらに治療後1年での評価を2例で行っている。
3: やや遅れている
BCRのレパトア解析のための手法に修正を加えていて、時間がかかってしまったことと、倫理委員会に研究プロトコールを提出した際に、遺伝子研究である事を指摘され、それに合わせた対応が必要であった点の2点で、患者サンプルの集積作業において予定より進捗が遅れてしまった。解析手法が、ほぼ解決し、現在実際のサンプルの評価を行っているが、治療後の反応性を見る研究であり、治療開始からの時間がまだ十分にたっておらず、モニタリングの成果をみるのに、再び時間が必要となっている。
平成31年度は、最大の問題点である患者サンプルの集積を推進させる。関節リウマチに対して、アバタセプト使用した患者を50例を目標に集積するが、集積に関しては当院のみでなく当院関連施設にも協力を依頼し、当院を受診していただき、採血し、これらサンプルから、B細胞受容体H鎖の検出を行い、レパートリー解析を行う。また、実際の解析も同時に進める。レパートリー解析には、免疫系バイオインフォマティックスのツールとして提供されているThe international ImMunoGeneTics information system(IMGT)のB細胞受容体分類を用いて、レパートリー解析を、V領域出現頻度、J領域出現頻度、を基本に解析していく。患者臨床症状を変数として設定し、この結果とともに、多変量解析を行う予定である。
理由:当該研究は倫理員会の承認を得て臨床調査を行うものであるが、予定より進捗が遅れてしまい、当初予定した謝金を執行できなかったため。使用計画:臨床調査に関わる患者謝金として平成31年度請求額と合わせて使用する予定である。
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Mod Rheumatol
巻: 28 ページ: 76-84
10.1080/14397595.2017.1332507
巻: Epub ahead of print ページ: Epub ahead
10.1080/14397595.2018.1533514
巻: 28 ページ: 986-992
10.1080/14397595.2018.1432331