研究課題
平成30年度はリポ蛋白リパーゼ(LPL)と肝性リパーゼ(HTGL)の酵素活性測定法の自動化の研究を進めた。これまで中性脂肪(TG)代謝の中心的役割を担っているLPLとHTGLの酵素活性測定法には放射性同位元素を含む試薬が必要であった。この方法は研究や少数の検体を対象としており、多数の患者検体の評価を同時に行うことは困難であった。従って放射性同位元素を用いることなく多数の患者検体を同時に処理できる酵素活性測定法の確立が望まれていた。我々はLPLとHTGLそれぞれの酵素活性を放射性同位元素の使用を必要としない比色法を用いて自動化することに成功した。我々の確立した方法では3μLと極少量の患者血漿を用いて10分間という短時間で酵素活性が測定できる。この方法の変動係数(CV)はLPLで1.0-3.6%、HTGLでは1.0-1.1%と良好な結果が得られた。この酵素活性測定を用いて冠動脈カテーテル検査(CAG)を受けた患者血漿を用いてLPLとHTGLの酵素活性の変動を調べた。CAGではカテーテル挿入後にヘパリン投与を行う。LPLとHTGLの濃度はともにヘパリン投与15分後に最大値になり4時間後、24時間後にはヘパリン投与前と同じレベルに戻った。それぞれの酵素活性はヘパリン投与15分後に最大値になりヘパリン投与前、投与4時間後と24時間後では測定感度以下に低下していた。LPLとHTGLのヘパリン投与15分後の酵素活性とヘパリン投与前の酵素濃度はそれぞれ有意な正の相関を示した。この研究成果につき論文発表を行った。
2: おおむね順調に進展している
研究計画通りに研究協力者の登録が進行しており、必要な例数が集まりつつある。研究協力者から採取した血漿・血清を用いてsdLDL、LDL、HDL、TG、LPL、GHPIHBP1およびHTGLの濃度測定を進めている。平成30年度の実績報告の通り少量の患者血漿を用いて10分間という短い時間でLPLとHTGLそれぞれの酵素活性が測定できる方法の確立に成功した。更にこれらのLPLならびにHTGLの酵素活性測定法を用いて研究協力者の血漿の酵素活性の測定を行った。この成果を研究論文として学術誌に発表した。以上のことから本研究は順調に進展していると考える。
当初の研究計画の通り、200名の研究協力者の登録を目指して研究を続ける。協力者の血漿・血清サンプルが一定数になった時点でsdLDL、LDL、HDL、TG、LPL、GHPIHBP1およびHTGLの濃度測定を進め、結果の統計解析を進めていく。研究協力者は既に脂質代謝に影響する薬剤の投与が始まっている例も多く存在するため既往歴、内服薬等、本研究に影響を与えると考えられる情報の収集を進める。情報収集と解析は個人情報管理に留意して注意深く進めていく。
すべて 2019 2018
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (1件)
Lipids Health Dis.
巻: 18 ページ: 84-92
10.1186/s12944-019-1014-7
Clin Chim Acta.
巻: 487 ページ: 54-59
10.1016/j.cca.2018.09.022