経皮的血管形成術では術後の再狭窄の抑制が課題である。研究代表者はExchange protein directly activated by cyclic AMP 1(Epac1)が血管の内膜肥厚を促進することを明らかにした。しかし,骨髄由来細胞を介した血管内膜肥厚の形成への役割は不明である。本研究では、血管傷害後の内膜肥厚形成における、Epac1を介した骨髄由来細胞の役割を解明し、血管形成術後の再狭窄発症予測のためのバイオマーカーの発見を目指しておこなった。 現在までに、Epac1 欠損型マウスとEpac1 野生型マウス間の骨髄キメラマウスで血管傷害モデルマウスを作製し、内膜肥厚形成度を組織学的に検討した結果、内膜肥厚全体に対して割合は少ないものの骨髄由来細胞が内膜肥厚形成に関与することが示唆された。 また、本研究を進めるための基礎となる、Epac1の内膜肥厚形成における平滑筋細胞内の分子メカニズムをさらに検討し、Akt/GSK3βを介するシグナル伝達経路にEpac1が関与することを見出し論文発表した。この論文は2019年度 第10回 日本生理学会入澤宏・彩記念JPS心臓・循環論文賞を受賞している。さらに昨年度は内膜肥厚形成が初期病態である肺高血圧症例についても検討し、Enolase-1を介した細胞遊走が内膜肥厚の一因にいなっている可能性を見出し論文発表した。 最終年度は、内膜肥厚部に蓄積する細胞外基質に着目し、骨髄由来細胞が深く関連する炎症と細胞外基質の構成分子であるFibulin-1を介した血管傷害後の内膜肥厚形成促進機序を明らかにし、第98回日本生理学会大会にて口頭発表をおこなったほか、その細胞外基質と血管内膜肥厚に関する論文を発表した。
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