バセドウ病はTSHレセプター(TSH-R)に対する抗体が血中で陽性であることより診断される。測定法は、TSH-Rへの結合能として検出する抗TSH-R抗体(TRAb;TSH Receptor Antibody)と、甲状腺への刺激活性(cAMP産生能)として検出する甲状腺刺激抗体(TSAb;Thyroid Stimulating Antibody)の2つがある。未治療バセドウ病の診断における、感度・特異度ともTRAbがTSAbより優れていたが、2013 年に高感度のTSAb測定法(ヤマサ)が開発された。この高感度法で測定したTSAbは未治療バセドウ病の98%で陽性で、TRAbの91%より優れた検査であると報告された。この高感度のTSAb測定法はin vitroでTSHレセプター抗体を検出する実験系の確立にも有用であると考え、今回の研究を計画した。 バセドウ病患者の末梢血単核球(PBMC)をLymphoprep Tube で回収し、6日間培養し、上清中のTSAbをヤマサの高感度TSAb測定法で測定した。結果はすべて測定感度以下であり、TSAbを検出できなかった。つぎにB細胞を刺激する因子で抗体産生を促す必要があると判断し、バセドウ病患者のPBMCをHuman B Cell Expansion Kitと共に培養し、TSAbを測定したが、やはり測定感度以下で検出できなかった。そこで、バセドウ病患者のPBMCをTSH-Rとともに培養したところ、TSH-Rなしで培養した場合に比べ、TSAbの指標となる上清中のcAMP産生量が増加した。ただし、cAMP産生量が十分ではないため、さらに高感度の測定法であると報告されたイクオリンTSAbで検討する予定であったが、発売されず検討できなかった。
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