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2019 年度 実施状況報告書

高齢者の消化管出血を来す新疾患EFEMP1アミロイドーシスの病態解明と発症予測

研究課題

研究課題/領域番号 17K08987
研究機関熊本大学

研究代表者

田崎 雅義  熊本大学, 大学院生命科学研究部(保), 助教 (50613402)

研究分担者 安東 由喜雄  熊本大学, 大学院生命科学研究部(医), 教授 (20253742)
大林 光念  熊本大学, 大学院生命科学研究部(保), 教授 (90361899)
山下 太郎  熊本大学, 病院, 特任教授 (90381003)
研究期間 (年度) 2017-04-01 – 2021-03-31
キーワードアミロイドーシス / 老化 / EFEMP1
研究実績の概要

アミロイドーシスは可溶性の蛋白質が難溶性のアミロイドへと変化し、諸臓器に沈着することで臓器障害を引き起こす疾患群の総称である。アミロイドを形成する蛋白質は、これまでに、ヒトにおいて36種類知られている。我々は、新規のアミロイド原因蛋白質としてEGF-containing Fibulin-Like Extracellular Matrix Protein 1 (EFEMP1)を同定し、世界に先駆け報告した(Tasaki et al., J Pathol 2019)。しかし、その病態は未だ不明な点が多く、バイオマーカーの開発にも至っていない。
本研究では、EFEMP1アミロイドーシスの病態解明および診断マーカーの開発を目的とし、研究を実施する。
研究計画3年目にあたる2020年度は、以下の点を明らかにした。(1)下肢静脈瘤を発症した患者病理組織において、頻度は低いものの、一部の症例でEFEMP1アミロイドが沈着していることを明らかにした。(2)病理学的検討の結果、コンゴーレッド染色やチオフラビンT染色に比べ、FSB染色がEFEMP1アミロイドの検出に優れることがわかった。(3)バイオマーカーを探索するために、EFEMP1アミロイド沈着部位を対象にLC-MS/MSを用いた網羅的解析を実施した結果、serum amyloid P、apolipoprotein Eやvitronectinに加え、多数の候補蛋白質を同定した。(4)昨年同定した新規アミロイド原因蛋白質の候補は、病理組織で敷石状の沈着パターンを示すことがわかった。また、複数の原因不明アミロイドを呈する症例で、共通の新規アミロイド蛋白質の候補が同定できた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

当初の計画通り、病理学的・生化学的解析によって、本アミロイドーシスの病態が明らかとなりつつある。(1)下肢静脈瘤を発症した患者病理組織において、頻度は低いものの、一部の症例でEFEMP1アミロイドが沈着していることをコンゴーレッド染色および抗EFEMP1抗体を用いた免疫染色により明らかにした。(2)これまでの検討で、本アミロイドはコンゴーレッドの染色性が弱陽性であることから、病理学的な診断精度の向上を目指し、各種染色法の検討を実施した。その結果、コンゴーレッド染色やチオフラビンT染色に比べ、FSB染色が本アミロイドの検出に優れることがわかった。モノクローナル抗EFEMP1抗体を併用することでさらに本アミロイドを検出しやすくなることがわかった。(3)バイオマーカーを探索するために、EFEMP1アミロイド沈着部位をレーザーマイクロダイセクションで採取し、可溶化後、LC-MS/MSでの解析を実施した。複数例を用いた解析の結果、アミロイド共存蛋白質として知られているapolipoprotein E、 serum amyloid P、apolipoprotein AIVやvitronectinに加え、多数の候補蛋白質が同定できた。(4) 本研究の副産物として、質量分析装置を用いた検討から、複数の症例において共通の新規アミロイド候補蛋白質が沈着することを突き止めた。EFEMP1に次ぐ、新規のアミロイド原因蛋白質と考えられることから、引き続き検討を行う。

今後の研究の推進方策

研究計画の最終年度にあたる2020年度は、引き続き、病理学的・生化学解析を実施するとともに、本研究を総括する。具体的には以下の研究に取り組む。(1) 全身臓器におけるEFEMP1アミロイドの沈着パターンおよび頻度に関して、症例数を増やし病理学的に検討する。(2)これまでの質量分析装置を用いた検討で同定された蛋白質の中から、バイオマーカーとして有用な蛋白質をコントロール群と比較し同定する。(3)本プロジェクトで見出した新規アミロイド原因蛋白質の候補が、アミロイド原因蛋白質としての性質を持ち合わせているか、生化学的・病理学的手法を駆使し多角的に検証する。(4)本研究で得られた結果の総括を行い、国際英文誌に報告する。

次年度使用額が生じた理由

予定していた国際学会への参加が、コロナウイルス感染症の影響により、延期となったため。
(使用計画)
延期になった国際学会が2020年度に開催予定であるため、学会旅費に充てる。中止となった場合は、病理学的・生化学的解析に用いる、抗体やメンブレンスライド、トリプシン、消耗品の購入に充てる。

  • 研究成果

    (7件)

すべて 2020 2019 その他

すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件) 学会発表 (4件) (うち招待講演 1件) 図書 (1件)

  • [国際共同研究] University of Pavia(イタリア)

    • 国名
      イタリア
    • 外国機関名
      University of Pavia
  • [雑誌論文] Simple, reliable detection of amyloid in fat aspirates using the fluorescent dye FSB: prospective study in 206 patients.2019

    • 著者名/発表者名
      Tasaki M, Milani P, Foli A, Verga L, Obici L, Basset M, Bozzola M, Ferraro G, Nuvolone M, Morbini P, Capello G, Ueda M, Obayashi K, Paulli M, Ando Y, Merlini G, Palladini G, Lavatelli F.
    • 雑誌名

      Blood

      巻: 134 ページ: 320-323

    • DOI

      10.1182/blood.2019000420

    • 査読あり / 国際共著
  • [学会発表] EFEMP1アミロイドの沈着頻度および至適病理学的診断法の検討2019

    • 著者名/発表者名
      田崎雅義、植田光晴、大林光念、安東由喜雄
    • 学会等名
      第66回日本臨床検査医学会学術集会
  • [学会発表] 質量分析装置を用いた新規アミロイド原因蛋白質、EFEMP1の同定2019

    • 著者名/発表者名
      田崎雅義、植田光晴、星井嘉信、磯口藍斗、山下太郎、大林光念、安東由喜雄
    • 学会等名
      第59回日本臨床化学会学術集会
  • [学会発表] EFEMP1 C末端領域のアミロイド形成能および細胞毒性2019

    • 著者名/発表者名
      田崎雅義、礒口藍斗、植田光晴、星井嘉信、岡田匡充、野村隼也、井上泰輝、増田曜章、三隅洋平、山下太郎、大林光念、安東由喜雄
    • 学会等名
      第7回日本アミロイドーシス学会学術集会
  • [学会発表] アミロイドーシスの診断法開発と臨床応用2019

    • 著者名/発表者名
      田崎雅義
    • 学会等名
      第66回日本臨床検査医学会学術集会
    • 招待講演
  • [図書] 21世紀の疾患: 神経関連アミロイドーシス2020

    • 著者名/発表者名
      安東由喜雄、礒口藍斗、一木裕子、井上泰輝、植田光晴、大林光念、岡田匡充、城野博史、田崎雅義、野村隼也、増田曜章、松下博昭、三隅洋平、山下太郎、渡邊礼美
    • 総ページ数
      136
    • 出版者
      医学と看護社
    • ISBN
      978-4-909888-07-5

URL: 

公開日: 2021-01-27  

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